第6話 秘密の行為Ⅰ

「心読まれるって、不思議な感覚だよな~。俺も読まれているって、初めて知った時には、正直焦ったよ!」


 今はもう慣れた言い方の道下。

 道下は、そうかも知れないが、俺は、それは嫌だし、いつまで経っても、慣れそうにない!


「嫌な人は、嫌ですよね。そういう人には、こうしてもらってます。右手の人差し指を使って、左手の平に五芒星を書いて飲み込んで下さい。そうしたら、私は、浅間さんの心を読めなくなります」


 あがり予防の『人』の文字って方法が有るけど......


 それの『五芒星』版か。

 早速試して、彼女の読心術を封じた!


 これで、もう大丈夫!


 俺のこの少しヤバめかも知れない心の声も、ミレーユさんに届かない!


 そういう便利な方法が有るなら、最初っから、教えてくれていたらいいものを......

ミレーユさんは少しばかり『S』の傾向有りなのかも知れない。

 もっとも宇宙人に、『SM』なんていうワールドが有るのか疑問だが......


 道下も、とっくにそうしていたから、あんな何でもないような口ぶりで言っていたのか。

 納得、納得!

 いや~、やっと、心の平穏戻ったわ~!


 「早速、始めましょうか?浅間さん、こちらに座って下さい」


 彼女は自然な感じで、左側の席に座るよう指示し、俺もそれに従った。


 肩の高さは違うから仕方ないが、もう少しで、お尻とお尻が触れ合いそうな接近度だったから、心臓の鼓動がバクバク大音響になり、ミレーユさんには無論のこと、下手すると道下にまで聴こえてるのではと思われた!


 この位置で、彼女の口元が、俺の右首に迫ってくるのか~!

 そりゃあ、ヤバイ~!


 俺は、これまで、女子とそんな至近距離まで接近した事が無かった!

 その免疫皆無の俺にとって、初めての親密な接近の相手が、これほどまでの美少女とは!

 吸血行為という代償はかなり痛いが、お釣りが来るくらい光栄な事だ!

 

 俺は、彼女が血を吸いやすいように、右首を近付けるべきだろうか?

 首を傾げた方が吸いやすい?


 いや、そういう事をあまりあからさまに俺からするのは、さすがに抵抗が有る!!

 道下にも、見られたくない!!


 ......と思った瞬間、再びミレーユさんの指示。


「浅間さん、私の両手の平の間に、浅間さんの両手を合掌した状態で、サンドイッチ状に入れて下さい」


 その指示で、俺は多分、露骨に驚きの表情を見せたはず!

 心は読まれないから安心しきっていたが、顔に出してしまったのは失態だった!


 それにしても、この手の形状は......


何か始まりの神聖な儀式のようなものだろうか?

 

 緊張と期待で手汗が半端なかったが、指示により、俺の手の平は合わさた状態だから、幸い、ミレーユさんに手汗はバレない!

 

 ミレーユさんの手の平は、それはもう柔らかく暖かく、幼児期以来、ずっと御無沙汰過ぎていて、忘れかけてはいるが......


 女の子の手、そのものという感触~!


 嗚呼、しあわせだな~


 もうこの際、儀式でも何でも良い!


 この後の吸血行為すら苦に思えないほどの夢見心地だ~!

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