レディ・ブルー

阿紋

 小高い丘の住宅街にポツリと一軒、風変わりな店があった。

 名まえは「レディ・ブルー」

 外からのぞくと雑貨屋のようで、洒落た陶器やガラスの小物が置いてある。一見高級そうだが、店に入った人の話によると値段は意外とお手頃だという。

 学校からの帰り道、僕は太郎とその店の前を通り過ぎていく。

「夜に、この店を見たことあるか」

「あるよ」

 夜になるとこの店は、店の名前をデザインした怪しいネオンサインを放ち、店の中は暗く、キャンドルの灯りだけが見える。

「夜は売春宿になるらしいぜ」

「噂だろう」

「そうだけど」そう言って太郎はニヤニヤ笑っている。

 太郎の家はこの辺ではない。今日はたまたま僕の家に用事があった。

「なあ、今度行ってみようぜ。夜に」

「閉まってるんじゃないのか」

「ネオンサイン灯して」

「クリスマスの頃になると、そういう家あるじゃないか」

「あれはLEDライトだよ」

「ネオンサインなんだぜ」

 太郎はやけにうれしそうだ。

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