第79話 稲沢ダンジョン、本気の探索開始
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079_稲沢ダンジョン、本気の探索開始
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B級ダンジョンの稲沢ダンジョンの探索に、本腰を入れる日がやってきた。これこそシーカーの本領だよね。
「第一エリアのボスは赤ヤマンバ。白髪じゃなく赤毛の老婆が、巨大な包丁を振り回してくるかな」
僕はルカとパーティーを組むことにした。
二級シーカーで今は三級相当の力を持つルカとパーティーを組むことは、僕にとって勉強になることがあるはずだ。もっと上を目指す以上、ルカから色々学ぼうと思っている。
この第一エリアに出て来る魔物は、リザードマン、ダタラ、ヤマンバ。そしてボスの赤ヤマンバ。
空にはデス・ワイバーンが飛んでいて、僕たちの隙を窺っている。
リザードマンは『火操作』『水操作』『風操作』『土操作』の特殊能力を持っている。ダタラは『頑丈』、ヤマンバは『立体機動』、デス・ワイバーンは『飛行』と『視力強化』を持っている。
これらの特殊能力で分かるように、ヤマンバはとても身軽で素早い。操作系の特殊能力を持つリザードマンも面倒だけど、ヤマンバは近づかれるとかなり危険だ。
デス・ワイバーンも気づいたら近くに迫っていたということになりかねない。だから周辺警戒に気を使うエリアだ。
幸いなことに、ルカは『刺突・改』『鋭敏』『観察力』を持っている。
他に僕の結晶から『毒操作』と『飛行』を覚えた。
『刺突・改』は剣や槍などで突く攻撃が強力になる特殊能力。
『鋭敏』は感覚が鋭くなって我彼の戦力差を感覚的に分かったり、罠や隠し通路などを発見しやすくなり、さらには気配に敏感になる。
『観察力』は魔物の動きの癖や弱点などを理解しやすくなったり、アイテムが呪われているかどうか、さらにはその価値などが分かるものだ。
「『観察力』を持っているのに、なんで呪われたの?」
「それね。……そうね、帰ったら教えるわ。今は目の前の敵に集中よ」
「了解」
『鋭敏』のおかげでルカが魔物の接近を感じてくれる。僕はそういった感覚的なことに才能がないから、本当に助かる。
シックスセンスは今でも稽古しているけど、まったくものになる気配はない。自分の才能のなさに嫌気がさすよ。
「デス・ワイバーン」
「あいよ」
後方の空から急速に降下してくる紺色の巨体は、八メートルほどある。花ノ木ダンジョンに出てくるワイバーンよりも倍以上大きく、速い。
デス・ワイバーンの特殊能力を奪わせてもらう。
力場がいくつかあり、生命力ではない他の力を奪う。
『飛行』『視力強化』が結晶化され、デス・ワイバーンは地面に落下した。
片方の羽が落下の衝撃で折れてしまったけど、それでも八メートルの巨体だから、パワーは馬鹿にできない。
転移ゲートをデス・ワイバーンの喉の前に繋げて、カラドボルグを刺す。
これまで『剣の戦い方』を色々模索してきたけど、これが一番安全な戦い方だと思う。初心に帰った感じだけど、僕には一番ピッタリかな。
「今の何?」
「転移ゲートを使った戦い方だよ」
「それ、反則」
「僕もそう思うかな」
魔石を拾って再び進んでいく。ルカの『鋭敏』のおかげで魔物の接近は事前に察知できて助かっている。
僕も前方だけなら、ルカに負けないくらいの察知能力があるけど、『魔眼』では後ろが見えない。
集めた特殊能力に『鋭敏』のようなものがあるとよかったのに。
ルカの案内で第一エリアのエリアボス(赤ヤマンバ)のところへと到着した。
まるで僕たちを待ってましたと言わんばかりの戦闘モードだ。両手に出刃包丁を持ち、ヤマンバよりも速く、回避能力も高いのが赤ヤマンバの特徴だ。
「私が戦う」
「一人で大丈夫?」
「今まで何度あれと戦ったと思ってるの?」
「あー、そうだったね。でも、気をつけてね」
「分かっているわ」
赤ヤマンバはとても速く、目で追うだけでも大変だった。それなのにルカは赤ヤマンバと互角のスピードで動いて、むしろそれより速いくらいだ。
しかも急所を的確に突いており、赤ヤマンバの動きが急激に悪くなっていく。
赤ヤマンバとの戦いに慣れているのもあるけど、圧倒的な才能に裏打ちされた強さを見せつけられた気分だ。
ルカは剣や短剣も使うけど、メイン武器は槍だ。
短槍と言われる一八〇センチくらいのもので、これが精霊級のいいものなのだ。
もちろん、剣も短剣も伝説級だった。
「さすがは二級シーカーだね」
「あんなのはお茶の子さいさい」
「お茶の子さいさいか。僕もいつかは言ってみたい言葉だよ」
「反則のくせに」
ハハハ、そうだったね。
第二エリアも第一エリアと同じようなビル群のエリアになっていた。
「出てくる魔物も同じだから」
「了解」
ルカはこの稲沢ダンジョンの第一〇エリアまでは行ったことがあるという。
大容量の収納鞄を持っているけど、基本は日帰りできるところまでらしい。
「でも、第一〇エリアまで行って日帰りできるの?」
僕のように『時空操作』があれば別だけど、そうじゃなければさすがに帰ってこれないと思うんだけど。
「走ったわ。あの時はちょっと疲れたわね」
「………」
いやいやいや。走ったで済ます? 時々思うけど、ルカって常識外の人だよね。
第二エリアも多くの魔物を蹴散らした。ルカがいると、本当に楽ができる。
僕、要らない子だね。
第二エリアのエリアボスは青ヤマンバですよ。第一エリアが赤で、ここは青ですか。
青ヤマンバの特徴は赤ヤマンバに頑丈さがプラスされた感じらしい。
「ここは僕が」
「瞬殺、期待するわ」
女の子からの期待には応えないとね!
―――『結晶』、フルバースト!
ドサリッと青ヤマンバが倒れ消えた。
『立体機動』『加速』『突撃』『斬撃』『頑丈』『近未来視』そして生命を結晶化した結果、まさに瞬殺だった。
「本当に瞬殺!?」
僕はドヤ顔をしていると思う。これくらいしか自慢するものがないから、我慢してね。
「『近未来視』という特殊能力を得たよ。効果は三秒先の未来が見えるってものだね」
「三秒もあれば、かなり余裕を持って待ち受けられる」
「ルカが使う?」
「リオンが使って」
「僕? それじゃあ、僕が使うよ。本当にいいの?」
赤ヤマンバは二四時間後にリポップするから、皆が欲しいなら集めればいいか。
僕は『近未来視』を自分で覚えた。任意発動型の特殊能力だから、使いどころが難しい。これから使って慣れていくしかないか。
第三エリアも引き続きビル群だ。魔物も変わりないのでサクサク進んでいたら、発見しました隠し通路!
ビルの裏手の寂し気な壁に、隠し通路用の『隠蔽・極』の力の壁がある。『隠蔽・極』って、初めて見た。これまでの隠し通路よりも高度な隠蔽がされているんだ、これ。
しかし、僕の『魔眼』に見えない力場はない!
『隠蔽・極』をありがたくいただき壁を壊すと、通路が現れた。
「何度も通ったけど、気づかなかった。悔しいわ」
「これまでのC級ダンジョンより、より高い隠蔽がされていたからだよ。なんたって『隠蔽・極』だからね」
「『隠蔽・極』……凄そう」
「凄いと思うよ。普通の『隠蔽』よりかなり高い隠蔽性だって」
『魔眼』と『テキスト』は本当にこういう時に役に立つね。
「それ、リオンが覚えて」
「でも、僕はさっき『近未来視』を覚えたから」
「私は前衛、リオンはオールマイティ。だからリオン」
「ふむ……分かったよ。僕が『隠蔽・極』を覚えるね」
『隠蔽・極』を覚えると、僕たちは隠し通路の中に入っていく。
『近未来視』を適度に発動させながら進んでいくと、罠があるのが分かった。
『魔眼』でも分かるけど、今は『近未来視』を練習だ。
「そこ、罠があるよ」
「気づかなかった。よく見ると少しだけ違和感ある」
ルカの『鋭敏』でも気づかないくらいの罠は、『隠蔽・極』によって隠されていた。もちろん、『隠蔽・極』はしっかりもらいましたよ。
「これ、まさか転移罠?」
『隠蔽・極』がなくなった罠が露わになる。魔法陣のようなサークルだ。
「うん。このダンジョンの第二〇エリアのモンスターハウスに飛ばされるね。しかも飛ばされるのは一人だけ。確実に殺しにきているよ」
「リオンがいてよかったわ」
僕は『時空操作・改』があるから問題ないけど、ルカでも第二〇エリアのモンスターハウスに飛ばされたらヤバかったみたい。
『隠蔽・極』はルカにも覚えてもらった。これで、僕たち二人は最高の隠蔽能力を持つコンビになった。
転移罠を結晶化して先に進むと、十字路になった。隠し通路とはいえ、ビルの中なのに十字路は珍しいな。
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