第55話
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055_伊豆ダンジョン
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今、僕はのんびりと電車に揺られている。
しかも、美女たちと一緒の旅だ。(ドヤ顔)
「ローカル線の旅もいいですね」
アオイさんが言うように、ローカル線のみの旅をしてる。
新幹線でも良かったけど、せっかくなのでゆっくりとした旅を楽しもうということになったんだ。
名古屋から豊橋、豊橋から浜松、浜松から島田、島田から三島とJR電車を乗り継いで、さらに三島から伊豆箱根鉄道に乗り換えた。さすがに疲れてきたけど、もうすぐ目的地に到着だ。
「初めて入るDランクダンジョンが、伊豆なんて思っても居ませんでした」
ミドリさんが言うように、僕たちは二週間の日程で伊豆ダンジョンに入ることになっている。
そのダンジョンは、難易度がDからCランクと幅広いのが特徴だ。清洲支部が管理しているダンジョンは難易度が単体の場合が多いけど、こういったダンジョンの数は少なくない。だから七級三人と五級一人のパーティーでも入れる。
「でも、アオイさん一人で旅館にお留守番じゃぁ、寂しくない?」
「いえ、大丈夫ですよ。仕事はどこでもできますから」
タブレットとノートPCを持ち込んで、旅館で仕事をするらしい。
彼女はもうすぐ大学の卒業式があるけど、今は何もすることがないらしい。
最近はほとんど僕のマンションに来て、僕の秘書として色々なスケジュール調整や調べもの、経理の処理などをしている。たまに掃除までしてくれるから、大変助かっている。
「うーん、さすがに疲れたね」
「早く体を動かしたい」
目的地で電車を降りたら、アズサさんとアサミさんが背伸びをした。僕も背伸びしよう。
「リオンさん。お昼をたべたら、世界遺産の韮山反射炉を見に行きましょう」
「お昼はどこで食べますか?」
お昼の時間を少し過ぎた。駅弁を買っても良かったけど、現地で美味しいものを食べようとなったんだ。
別に名物じゃなくても、美味しければいい。僕的にはラーメンでもいいんだけど、女の子たちを連れてラーメンというのもお洒落じゃない。
と言って、僕では気の利いたものを食べさせてあげられない。
「僕はなんでもいいよ」
「それじゃあ、あそこに入りましょう」
アオイさんが指差したのは、駅からすぐのところにある焼き肉屋だった。
昼でもやっている焼き肉屋の換気扇から、モクモクと煙が排出させている。アオイさんはこの匂いに誘われたようだ。
「いい匂いですね」
「肉か、いいね!」
「肉にしよう!」
ミドリさん、アズサさん、アサミさんも同意した。
僕たちは店に入った。八組のお客さんが居たけど、席は空いている。
六人がけの席に陣取りメニューを見ていく。
特選ロースや霜降りカルビなどが目につく。文字だけで美味しそうに思えるのはなぜだろうか。
皆の意見を聞き、注文する。僕は大ライスも頼んでがっつり食べようと思う。
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シーカー協会伊豆支部で申請して、僕たちは伊豆ダンジョンに入って行く。
伊豆ダンジョンは塔型のダンジョンで、高層ビルのように聳え立っている。
その中はまるで近代的なビルの中のようだ。
ダンジョンの入り口を入ると、広いエントランスになっている。
正面にエスカレーターがあるけど、動いてない。
右にはエレベーターが六機あるけど、これらは下りる専用で上には行けない。
左には奥へ続く通路がある。
アオイさんが集めた情報を、僕たちは頭の中に入れている。
短期でこの伊豆ダンジョンを踏破しようと思うと、多くの情報を頭に詰め込まなければいけない。
そのうえで、タブレットやスマホの地図を見ながらダンジョン内を進むことになる。
僕たちは左へ向かう。エスカレーターを上がっても第二エリアには行けないからだ。
先行するアズサさんのハンドサイン。魔物が三体居る合図だ。
第一エリアはDランクダンジョンクラスの魔物がうろついている。
「機械ゴーレム人型が三体」
人型のゴーレムなんだけど、体が機械仕掛けになっている。体長は二・五メートル程で、事前情報では防御力が高い魔物だ。
僕は『テキスト』で機械ゴーレム人型を鑑定してみる。
「生命力一〇〇、物理攻撃力八〇、物理防御力一五〇、特殊攻撃力五〇、特殊防御力一二〇」
「情報通り、防御力が高いですね。最初は私たち三人で対処します」
「了解だ、アズサさん。でも、危なそうなら介入するよ」
「「「はい」」」
ミドリさんのルートニードルで三体に先制攻撃。
近代的な造りだけど、根で攻撃できるんだね。
三体に突き刺さった根は、そのまま絡みついていく。
「アサミ、行くよ!」
「了解!」
アズサさんとアサミさんが、走り出す。
二本の短剣を両手に持ったアズサさんが、一体に飛び蹴りを放った。蹴られた機械ゴーレム人型は倒れて、そこにアズサさんが馬乗りになって短剣を首に突き刺す。
プシューッという音がして、その機械ゴーレム人型の動きが止まる。倒したようだ。
アサミさんは盾を構えて一体に体当たり。金属同士が当たる甲高い音がし、機械ゴーレム人型が吹き飛んだ。
床から生えて刺さっている根がピンッと張って、もうすぐでちぎれそうだった。
アサミさんは今回から武器を
最後の一体は、アズサさんが後方から首の後ろに短剣を刺し入れて倒した。
機械ゴーレム人型の急所は首で、短剣のようなものでも装甲の隙間から刃物を入れて内部を切り裂けるのだ。
シーカー協会のサイトにはこの情報はなかったけど、アオイさんが色々なサイトから情報を吸い上げて取捨選択してくれた。
ネットにある情報は、必ずしも正しいとは限らない。だから、アオイさんのような情報の取捨選択をしてくれる人が居るととても助かる。
僕たちはどんどん進んで第四エリアに入った。
そこで探索を進めていると、ありました。隠し通路です!
「皆、ここに隠し通路がある。分かるかい」
「「「ここが隠し通路!?」」」
三人は驚き、壁を触ったりして確かめる。
ミドリさんは壁をペタペタ触って首を傾げ、アサミさんは右手で壁を触り唸り、アズサさんは顎に手を当てて考え込んでいる。
「あっ!? もしかしてここが隠し通路との境ですか」
「お、よく分かったね、アズサさん」
「え、どこですか!?」
ミドリさんがアズサさんが指差した場所をマジマジと見入るが、さっぱりという顔をしている。
「まったく分からない」
アサミさんもさっぱりのようだ。
「こことここ、なんか違和感があるのよ」
「それが遠目でも分かるようになると、隠し通路を発見できるよ」
「「アズサ、がんばって!」」
「あんたたちねぇ。私に任せっきりにするつもりね」
「「えへへへ」」
こういうのは特殊能力だけでなく、才能もあるからね。アズサさんにはそれがあるのかもしれない。
「ところで、発見してもこの壁を壊せないと意味がないのよ」
「そこは私に任せて!」
ミドリさんが胸を叩いた。
何をするのか見ていると、壁から植物の芽が生えて来た。
なるほど、あの植物で壁の力を吸い取るわけか。
しばらくすると、壁がガラガラッと音を立てて崩れた。
「「「イエーイ!」」」
三人がハイタッチ。
え、僕は?
「「「リオンさんも、イエーイ」」」
あ、はい。ハイタッチ!
仲間外れじゃなくて、良かったー。
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