第56話
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056_伊豆ダンジョン第四エリア隠し通路
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伊豆ダンジョンの第四エリアで隠し通路を発見した僕たちは、その中へと進んだ。
「あ、宝箱です!」
「あれが宝箱……」
「うわー、初めて宝箱をみましたよ」
アズサさん、アサミさん、そしてミドリさんが宝箱を発見して興奮している。
「宝箱には罠がある場合もあるから、気をつけないといけないよ」
「「「はい」」」
僕は『魔眼』と『テキスト』があるから罠の有無が見えるけど、三人にはそういった特殊能力はない。
宝箱は三つ。鉄、銅、銀が一個ずつだ。
三人はクルクルと宝箱の周りを回っている。何をしているんだろうか?
「これは危険そう。こっちとこっち大丈夫かな」
アズサさんが罠のある鉄の宝箱を危険だと言う。
感覚で罠が分かるとか、すごすぎるんですけど。
「二人は感じるかな?」
「「まったくです」」
そりゃそうだ。これが普通なんだと思う。
「アズサさん。もう一度確認してみて。本当にその鉄の宝箱が罠かね」
「了解です!」
敬礼して応えたアズサさんは、また宝箱の周りを回り始めた。
「うん。やっぱりこれですね。この鉄の宝箱は罠があります。銅と銀はありません」
僕は微笑み、頷いた。
「僕の『テキスト』でも、その鉄の宝箱に罠があると言っているよ。おめでとう」
「やったーっ!」
またハイタッチ。パーンッと渇いた音が響いた。
「喜ぶのはまだだよ。この鉄の宝箱をどうやって開けるのかな」
「それなら私に任せてください」
「ミドリさんに考えがあるんだね」
「はい」
「それじゃあ、鉄はミドリさんに任せて、先に銅と銀を開けようか」
「「「はーい」」」
アズサさんとアサミさんがジャンケンをして、チョキでアサミさんが勝って銀の前に。
「くっ……」
アズサさんは渋々銅の前に立った。
隠し通路や罠の発見には勘を働かせるのに、ジャンケンは弱いんだね。
「それじゃあ、銅のアズサさんから」
「なんか銅と言われると、三位になった気分で嫌ですね」
「……そういうのは、順番でいいんじゃないかな。隠し通路を見つけるコツが分かれば、宝箱を発見する可能性も高くなるだろうし」
「それもそうか。了解です、教官殿!」
ビシッと敬礼したアズサさん。
僕はいつ教官になったのだろうか?
「一番、アズサ。いきまーっす!」
パカッ。中には大型の盾が入っていた。
「えー、アサミのじゃーん」
アサミさんのかはともかく、『テキスト』で見てみる。
名称 : 反撃の盾
希少性 : とても珍しい
効果 : 生命力八〇〇ポイント増加、物理防御力四〇〇ポイント増加、特殊防御力三〇〇ポイント増加。攻撃を受け続けることで、自身の攻撃力が微増していく。戦闘終了をもって増加した攻撃力はリセットされる。
希少性がとても珍しいだから、そこまで効果は高いわけじゃないと思う。微増がどの程度の上げ率かは、使ってみて様子を見る感じかな。
「アクセントの十字が格好いい」
アサミさんは盾の意匠が気に入ったようだ。
これはアサミさんが実際に使って、使い勝手を確認してもらうことになった。
「アサミのばかりじゃずるいわ。今度は短剣がきますように!」
「私のだってほしいわよ」
「ミドリはチティスの種を使ったじゃない。だから今度は私よ」
「そう言われると、ちょっと弱いわね……。分かったわ、今回はアズサに譲わ」
女同士のバチバチに発展しなくて良かった。そんなことになったら、僕はどうしたらいいのか分からないよ。
でもね……アズサさんに譲っても、アズサさんが使えるアイテムが出てくるとは限らないんだけどね。
「次は銀を開ける」
アサミさんは淡々と銀の宝箱の蓋を開けた。
中には真っ黒なローブが入っていた。
名称 : 隠匿のローブ
希少性 : 覇王級
効果 : 装備者を隠すローブ。姿、音、臭いを遮断する。
「これ、いいものだけど微妙だよね」
アズサさんが隠匿のローブを持ち上げて、眉間にシワを寄せた。
「それを装備していれば、隠密行動できるわけだからアズサに丁度いいのかもしれないわよ」
「僕もミドリさんが言うように、アズサさんにいい装備だと思うよ。いきなり現れて急所攻撃とか、暗殺者っぽいよね」
「暗殺者!?」
アズサさんが目を見開き、頬を緩ませた。
暗殺者が琴線に触れたようだ。
「それじゃあ、これは私が使わせてもらうわ」
「「異議なし」」
浅いエリアについては、僕は何もしない。ドロップしたアイテムや発見した宝箱のアイテムは彼女たちに譲ることに話がついている。
その代わり、第一〇エリア以降は僕がもらう。
「次は罠ありの鉄だね」
「私の番ね。皆、宝箱から離れて」
ミドリさんを含めた全員が宝箱から距離を取った。
「じゃあ、やりますね」
鉄の宝箱のすぐ横の床から芽が生えて、蔦が宝箱に絡みついて行く。その蔦の先端が宝箱の蓋を持ち上げていく。
───ドンッ。
宝箱を中心に小さな爆発が起こった。
僕たちのところまで爆風は届かずにやり過ごすことができた。
「あの爆発……なんか変ね……」
アズサさんが顎に手をあてて、宝箱のほうを見ている。
「「どうしたの?」」
「あの宝箱の周辺が、妙な感じなの。嫌な感じだわ」
その言葉に僕は頷いた。
「罠は爆発じゃなくて毒だからだよ。小さな爆発で毒を散布しておいて、爆発をやり過ごしたと思って近づいた人を毒で殺すものだね」
「「「うわー、えげつないですね」」」
「アズサさんがこういった罠や嫌がらせに敏感で良かったよ。そうじゃないと、かなり危険だからね」
「えへへへ。褒められちゃった~」
アズサさんがデレた。まあ、ツンはないけどね。
「でも、毒があると近づけませんよ」
「大丈夫だよ、ミドリさん。あのような毒はすぐに消えるから。消えるまでに数分もかからないと思うよ」
「「「良かったー」」」
毒が消えるのを待っていると、アズサさんが僕の顔を見た。毒が消えたタイミングが分かったようだ。凄い勘だね。いや、感性と言うべきかな。
「もういいと思うけど、どうですか?」
「うん。大丈夫。アズサさんの感覚は正しいよ」
「やったー!」
喜ぶアズサさんが飛び出して宝箱の中を覗き込んだ。
「うーん、ポーションかな」
アズサさんの横から中を覗くと、瓶に入った緑色の液体があった。
名称 : 中級ポーション
希少性 : ありふれたもの
効果 : 生命力を三〇〇ポイント回復させる。
「中級ポーションだね」
「うわー、ハズレかー」
僕が教えてあげると、アズサさんは傍目にも分かる程落胆した。
「反撃の盾と隠匿のローブがいいものだから、それで十分だと思うわよ」
「でも、ミドリの分がないじゃない」
「アズサが言っていたように、私はチティスの種を使ったから」
ゴブリンキングから得たチティスの種は、ミドリさんに使ってもらった。
ミドリさんの『植物操作』が回復系のチティスの実を育てることができるようになった。
僕も三〇個ずつ赤と黄の実をもらって収納している。使わないのが一番だけど、チティスの実は薬以外にも果物としても優秀で、赤色の味は高級メロンで黄色の味は完熟マンゴーかな。共にとても甘くて美味しいんだ。
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