第22話
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022_六級になったよ
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僕の『SFF』が一二〇〇になって、六級の昇級試験を受けられる一〇〇〇ポイントを越えた。
さっそく昇級試験の申込をしたんだけど―――。
「カカミさんの昇級試験は免除になっておりますので、昇級手続きをします」
大水支部長が昇級試験は免除するように手配してくれたようだ。そのことを僕に言わないのは、サプライズなのかな?
でも、大水支部長のおかげで僕は六級に昇級した。D級ダンジョンは七級以上なら入れるけど、六級が推奨されている。これで大手を振ってD級ダンジョンに入れる。
枇杷島ダンジョンを早く踏破して、D級ダンジョンの探索をしたい。今すぐD級ダンジョンに行ってもいいけど、中途半端は気分的に嫌だ。
シーカー協会の資料室で枇杷島ダンジョンのことを調べていたら、職員がやってきて来客だと教えてくれた。シーカー協会で来客とか、どういうこと?
よく分からないけど職員についていくと、応接室にスーツを着た身なりの良い男性が居た。
「私は近藤と申します。
丁寧な言葉遣いの男性は、名刺を差し出してきた。弁護士って書いてある。
「三日前に、事故に遭った人を介抱したと思いますが、それに相違ありませんでしょうか?」
三日前というと、あの事故のことだよね。僕は何も悪いことをしてないよ、なんで弁護士が出てくるの?
まさか、怪我の程度を確認するために、少女の体を触ったのがマズかったかな……。それは不可抗力だよ。
「そう警戒されなくて結構ですよ。私は各務様に介抱していただいた女性の、ご両親の代理人をしております。
なんだそんなことか。弁護士なんて初めて会ったから身構えちゃったよ。
「困った時はお互い様なので、別にお礼なんていいですよ」
僕が断ると近藤さんは、どうしても僕を連れて行きたいようだった。代理人というくらいだから、クライアントの威光に沿うようにしたいのかな。
必死に僕を説得してくるので、仕方がなく受けることにした。明日の一一時にマンションまで迎えに来てくれると言う。すでに僕の住所まで調べているのが怖かった。弁護士って探偵みたい。
翌日、予定の時間に迎えが来た。黒塗りの高級車で、運転手付きだ。
そう言えば、事故を起こした自動車もこんな黒塗りの高級車だった気がする。多分だけど、あの子はお嬢様なんだと思う。
血だらけだったので少女の顔は覚えていないけど、額に大きな傷があってかなり酷い出血だったのは覚えている。一応、傷は結晶の効果で塞いだけど、傷痕が残らなければいいな。女の子なのに、額に大きな傷痕があったら可哀想だ。
かなり高級そうなレストランに案内された。以前、ミドリさんに連れて行ってもらったホテルのレストラン同様の高級そうな雰囲気が漂う店。
店員に案内されて店の中に入っていくと、なぜかミドリさんが居た。そのテーブルにミドリさんに似た少女と女性、それと五〇くらいの男性が居た。
「あれ、ミドリさん?」
「リオンさん。今回はありがとうございました」
いきなりミドリさんに頭を下げられてしまい、僕はあたふたした。よく分からないので聞いてみると、僕が助けたのはミドリさんの妹のアオイさんだった。
「意識が朦朧としていましたが、必死で私を助けてくれようとしているリオンさんの声だけは記憶にあります。助けてくれて、ありがとうございました。あ、私は
事故があったとは思えないほど明るい表情のアオイさんは、ミドリさんに似て美少女だ。
「体はもう大丈夫なの?」
「はい。気になるところもなく、精密検査の結果にも異常はありませんでした」
見たところ額に怪我の痕はなさそうだ。本当に良かった。
「おかげさまを持ちまして、アオイもこうして無事に生きております。聞けば貴重なアイテムを使っていただいたとか。しかも、ミドリも以前助けていただいたとか。二人を助けていただき、本当に感謝しております。私は父親の
ミドリさんのお父さんが頭を深々と下げる。頭を上げてくださいと言う。
「私はミドリとアオイの母で、
「え、お母さん? お姉さんではないのですか?」
とてもお母さんには見えなかった。どうみてもお姉さんだよ。
「あらやだ、お姉さんだなんて。うふふふ」
お母さんは凄く若く見えた。二〇代でも通じるくらいだ。
「カカミさんはお口が上手ですね。お母さん、気に入っちゃった♪」
お母さんがとても機嫌が良い。でも、本当にお姉さんに見えたんだよ。
しかし、まさかあの少女がミドリさんの妹だとは思っていなかった。
困っている人がいたら助けるのは当然だし、僕の力が及ぶ限りのことはするつもりだよ。
「ささ、座ってください。カカミさんは嫌いなものはありますか?」
椅子に座って、特に嫌いなものはないと返事した。
「この店はステーキが美味しいのですが、それでいいですかな?」
「あ、はい。ステーキは大好きです」
最近は肉を食べられるけど、それまでは一日一杯のカップラーメンの日も普通にあった。
メニューを見てもどうせ読めないので、料理はお父さんにお任せする。
「カカミさんは優秀なシーカーだそうですね」
お父さんの質問に、僕は苦笑いを浮かべた。
「いえ、僕なんて大したものではありません」
特殊能力の『時空操作』『魔眼』『結晶』が凄いのであって、僕が凄いわけではない。
「月間シーカーのサハギン砦攻略レイド戦の記事を読ませてもらいましたよ。発見した宝箱の数も一番多かったし、手に入れたアイテムの価値も素晴らしいものじゃないですか。それで大したものではないと言うと、謙遜ではなく嫌味になりますよ」
「あなた!」
お母さんに睨まれてお父さんが慌てて、年長者からのアドバイスだと言った。
「でも、リオンさんはいつも謙虚です。もう少し誇ってもいいと思いますよ」
ミドリさんにそう言われたけど、僕自身は謙遜や自分を卑下しているつもりはないんだ。
「すまなかったね、変な話をして。しかし、私はカカミさんがこの世で一番のシーカーだと思っている。私の大事な娘たちを助けてくれたのだからね」
「ミドリもアオイも、カカミさんが居たからこうして生きていられるのです。親として感謝してもしきれないほどです」
ご両親にそう言われると、僕も少しは人の役に立っているんだと思える。
「リオンさん。私が大学卒業したら、リオンさんのところで働かせてください」
「はい?」
「アオイ、あなた何を言っているのよ?」
ミドリさんの言う通りだぞ。
「だって、シーカーって自営業なんでしょ。私が秘書になって、雑務を全部してあげるから」
「僕はそんなに困ってないから、大丈夫だよ」
「何いっているんですか。リオンさんの活躍はこれからなんですから、色々な雑務はこれから増えるんですよ」
そ、そうなのか……。そういえば、次の確定申告はかなり面倒そう。
「カカミさんが困っているじゃないか、アオイ。しかし、カカミさん。アオイは経営学を学んでいるから、少しはカカミさんの役に立てると思うよ」
お父さんまで……。
「お父さんまで何を言ってるのよ」
「何をって、シーカーになりたいと言ったミドリよりは、よほど安心できる仕事だぞ」
「そ、それを言わないでよ……」
ミドリさんがシーカーになるのは、父親としては反対だったようだ。可愛い娘が危険なシーカーという仕事に就くと言われたら、そういう反応をしても不思議はないと思う。多分、僕に娘が居て、シーカーになると言ったら反対すると思う。
「返事は今すぐでなくてもいい。考えてやってくれないかね」
お父さんまで乗り気なのは、ミドリさんの反動なのかな。
何はともあれ、楽しい食事になったと思う。そういえば、このお店には僕たちしかいないんだけど?
僕がキョロキョロしていたら、お父さんがどうしたんだと聞いてきた。
「今日は貸し切っているんだ。だから、大騒ぎしても大丈夫だよ」
大騒ぎするつもりはないけど、これだけの店を貸し切れるだけの財力があるんだね。
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