第2160話 返済
たまに顔を出すバー
カウンターに向かうとマスターが見当たらない
「あ、いらっしゃいませ、何します?」
カウンターに座る、スーツ姿の30代男性が声を掛けてきた
"誰だお前は?"
河野さんは怪訝な表情でカウンターに座ると、辺りをキョロキョロ見回す
マスター、急な買い出しにでも行ったのだろうか?
「お客さん、常連さん?」
右端に座る、カウンターの男が話し掛けてくる
「ん・・・まあ」ぶっきらぼうに答える河野さん
「当分帰ってこないんじゃないかな。俺の兄貴と出て行ったからなぁ」
「・・・マスターお出掛けなんですか」
「さっき出て行ったところ」
そうか・・・
河野さんは一旦座った椅子から降りると、椅子を戻す
「また出直します」
「あっそう?俺、簡単なものなら作れるよ?笑」
河野さんは軽く頭を下げ、バーを出た
バーを出たところで、今まさに店に入ろうとしていた同じく常連の男性と鉢合わせする
「あっGさん、マスターいないそうですよ」
「えっ?」
「"先客"と出たみたいです」
「あ〜、マジかぁ」
「長くなるみたい」
「・・・了解、出直しますわ」
だがマスターはそれきり戻ることなく2週間後、雑居ビルの4階から落ちて亡くなった
自殺に見えるが、実際は突き落とされたのだろう
2017年2月の話で、ニュースにもなった
「全くあいつら、すぐ殺すからなぁ。あの日はマスター宛に追加融資の1,000万が振り込まれた日だったのよ」
河野さんはたかだか30万を回収するために店に行ったらしい
ちなみにGさんは100万だったという
金融公庫などが融資を決める際、信用情報(返済遅延や延滞の記録、また通帳の入出金の動き)などを詳しく精査する
河野さん「だからそんな痕跡を口座に残さないために、現物を貸し付ける我々がいるわけだが・・・御利用はほどほどに、だぜTちゃん笑」
大丈夫、今のところ孫息子から2,000円借りてるだけだから。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16818093074943267176
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