第1520話 人違い
とあるビルに入るラウンジ
「ビルのオーナーがとにかく口煩い方で『客の来店予定がある日にしか店を開けるな』とか言って来て・・・貸主の意向なので仕方ないですが、まぁまぁ面倒な方なのです」
「あー、だからママ、俺が早く開けてって相談した時、躊躇したんか」
「そーなんですよ、オーナーが不意打ちで来るんですよ犬連れて」
「犬連れて来るの?警察犬みたいやな」
「そーなんですよ!ただ、犬は可愛い」
「可愛いんかい笑」
「マルチーズなのかな、ヨークシャテリアなのかな・・・小さくておとなしくて可愛いんですよねー・・・犬はね」
という訳で早く店を開けてもらい、仲間と数人、16時から飲んでいた
スマホに客先から電話が掛かってきたので、席を立ち、店の外に出る
・・・と、坊主頭で首にトライバル模様のタトゥーが見え隠れする、ガタイの良い年齢不詳の男が
フレンチブルを抱え、共用廊下の向こうからこちらを見ている
・・・あっ!もしやあれがオーナー?
様子を見にきたのだろうか・・・慌てて目線を逸らせる
だが、ずっと凝視されている気がする・・・
電話しながらチラッと男に顔を向けると、やはり食い入るように俺を見ている
が、間もなく男はエレベーターのボタンを押すと、乗り込んで階下に消えていった
店に戻り、ママに「オーナーいた!いま外にいたぞ犬抱えて」と報告する
「えーっ、こんな時間から?!嫌だなぁ・・・」ママは渋い顔をする
「けど飼い主に似るというか何というか、あのフレンチブルも可愛いというよりは・・・」
それを聞いたママが「あっ」という顔をして「Tさんそれお花屋さん!」と笑う
「あの人は優しいのよ」
「花屋さん?あの人が?スキンヘッドの?」
「そうそう!心は女性なのあの人。・・・ていうかTさん、お花屋さんに気に入られそう♡」
なるほど、もう気に入られたかも。
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