第1303話 神階(回)

那覇の牧志を1人で飲み歩き、かなりフラフラになってはいたが、もう一軒行く気になった


といってもまだ3軒目だ


たしかあのビルの4階に・・・

ママと女の子×2名でやってる、カウンターだけの狭いダイニング・バーがあったな・・・


半年くらい足が遠退いているが。


1階エレベーター横の表示を見ると、4階のどの店名も知っているように思える


まあええわ・・・エレベーターに乗る


4階フロアにやってきた


あ〜確か、出て右手の角の・・・あっ、この店この店!


カランカラ〜ン


「いらっしゃいませ」


あら。カウンター奥に男性客が1人居るだけだ


こんな女の子いたっけ・・・新しい子かな?


俺は入口側、右端の席に座る


「ハイボール」


「かしこまりました」


何だかこの女の子、クールというか愛想が無いというか


うつむき加減だし、機嫌でも悪いのか?


チラッと左手カウンター奥の客を見る


40代のサラリーマンだろうか


アテをつまみ、同じくハイボール?をチビチビ飲みながら


箸を休めては両肘ついてニコニコ、店内を見回している


たまに、目は合わないが女の子を見つめている


あっ、だからこの子は視線を上げないのか?


それにしても・・・

俺も店内を見回してみたが


こんなアジアンテイストな装飾だったっけ?


・・・と、カランカランと入口扉が開き、お使いにでも行ってたのかビニール袋を下げた女の子がカウンターに入った


「いらっしゃいませ」


おや?

何だかこの子は俺を探り気味のような・・・


「どうぞ」


カウンター越しに、最初のクールな女の子がアテとハイボールを置いてくれた


元々女子は2人いたが、どちらも見たことがない・・・ママはどうしたんだろう?


なんだかアウェー感が漂ってきた・・・

もしや・・・


とそこに、再度カランカラカランと入口扉が開き、若く背の高い男性が入ってきた


そのままカウンターに入る


あ。

やってもうた。


階違い?

ビル違い?


俺はどうやら、知らない店に飛び込んだらしい


「いらっしゃいませ」


ノッポの男性が俺に挨拶してくる


ああ、奥のお客はもう知ってるようだ


店の男「お客様、こちらの店は初めてですか?」


(初めてだと言えば良いものを)俺「あっいや、前に何度か連れてきてもらった事が・・・」


「いつ頃ですか?」


「半年ほど前かなぁ・・・」


「あ、でしたらここ先月オープンしたばかりなので、前のお店ですかね?」


「あっそうなん?!じゃあ辞めたのかなぁママ・・・」


「店長さんじゃないですか?」


「え?」


「ここ、前はアダルトグッズの店でしたから」


奥の先客「私も間違えたんですよ〜笑」


何?

つまり?


前のアダルトグッズの常連客が2人、間違えて入店した構図?


どうりで女子の空気がおかしかったわけだ・・・


ていうかママの店、博多や。

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