第1291話 花見の思い出

沖縄で桜といえば、本土のソメイヨシノではなく琉球寒緋桜(かんひざくら)だ


白ではなく、濃いピンクの花が下向きに咲く


1月中旬~2月中旬がピークなのだが、この時期は寒いから(20度切るくらい)


ブルーシートひいて花見が開かれるようなことはない


皆、写真や動画撮りながらの通り抜けだ


ちなみにコスモスやひまわりも1月下旬あたりから花が咲く


あ~花見、やりたいなあ・・・毎年寂しい思いになる


20年以上前の大阪時代。


花見は毎年、俺が川沿い(大阪市中央区の大川)を下見して場所取りしていた


最大200人集まることもあったから、場所取りだけでも大変だ


若い奴らを数人引き連れ(普通の会社です)、大きな桜の木4本分ほどのスペースを独占するとなると毎年モメる


・・・とまあ物騒な話は置いといて、ある年の4月。


170名規模の花見をセッティングし、イベント業者も呼んで本格的に宴会がスタートした


場所取りまでの緊張感から解放されると、ひたすら飲み、騒ぐ


ピッチを上げすぎて、開始30分くらいでクラクラしてきたので


「ちょっと風に当たってきますわ」


靴を履き、川沿いを偵察に出掛けた


桜満開の週末金曜なので、あちこちで夜桜を楽しむ大小織り交ぜたグループが、所狭しと酒盛りをしている


自分のグループから離れて川沿いを数分歩いたところで、30人ほどの団体が宴会しているのを見つけた


だが少々違和感があったので、立ち止まって観察してみることにした


同じブルーシートで飲んではいるのだが、25名ほどの30代の男女会社員の隣で


汚れた作業服を着た、50代のオッサン連中が5人、飲んでいる


会社員の集団が控えめに盛り上がる隣で、そのオッサン達は品なくワイワイ騒いでいる


またえらいコントラストの違う集団やな・・・


スーツのズボンのポケットに両手を突っ込んだままボーッと眺めていると


その品のないオッサンらが俺を指差し、何やら言っている


ん?

俺に何か用か?


オッサン連中の方に歩みを進めていくと


「なんや兄ちゃん、仲間入りたいんか?」と声を掛けられた


「あっいや、楽しそうやな~思うてね」


「兄ちゃん、まあ立っとらんとこっち座りいな。おうネーチャン!この兄さんにビール持ってきたれや!」


声を掛けられた会社員集団の女性が1人、ビクッとしながら立ち上がり


酒をストックしているクーラーボックスに向かう


俺「いやいや!人様の花見の邪魔したらあかんわ~」


「かまへんかまへん!1人なんやろ?まあ飲もうや!」


俺は酔った勢いもあり、誘われるがままに靴を脱ぎ、オッサンらのグループに混ぜてもらう


「あっど、どうぞ」


女性が缶ビールを2つ持ってきてくれた


「あっ、なんかすみません、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、乾杯!」


声を上げるとオッサン連中は「乾杯~!!」と合わせてくれたが


隣の会社員の集団からは何の声もあがらない


俺「なんやこっちから向こう、えらい静かですやん。何かありましたん?」


「ほっとけほっとけ!」オッサンズはお構いなしに飲み続ける


それから30分もしないうちに隣の会社員達が立ち上がり、片付けを始める


あれ?

もうお開き?


そのうちスーツ姿の男性の1人が「あの・・・そろそろ退いて欲しいのですが」と声を掛けてきた


「あっすんません」俺が立ち上がろうとすると


「まだワシら気ィ良ぅ飲んどるやないけ!」


オッサンの1人が男性に怒鳴る


ビクッとした男性はそれ以上何も言わず、去っていく


というか25名ほどの会社員集団は、オッサンらを置いて帰ってしまった


俺「何ですのあれ?仲間やのにこんな礼儀知らずな飲み方ある?!」


俺は一升瓶から注がれた日本酒を飲みながら、そそくさと去る会社員達の背に声を上げる


・・・さて、それからどのくらい経っただろうか


「Tさんこんなところにおったんですか?!」若手が探しにきた


「もうそろそろウチらお開きっスよ。戻ってもらわんと」


「え、もうそんな時間?わかった戻る」


時計を見ると、オッサン連中と騒いでいるうちに1時間半も経っていた


「おっちゃんら有難う!めっちゃオモロかったわ!!」


「おう、兄ちゃんまた飲もうで!!」


礼を言い、自分のグループに戻る途中、若手が


「Tさんアイツら、この川に住んでる浮浪者ですよ?俺らが場所取りしてる時も『邪魔されたぁなかったら酒くれ!』いうて絡んできましたよ?!」


( ゚∀゚ )


(ていうか・・・私も相当タチ悪かったです、思い出しながら猛反省です)

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