第927話 上田くん
昨年11月14日(日)。
孫を連れてディズニーシーにいた俺は、昼飯後のタイミングで猛烈に「大」をもよおしてきた
後で娘に教えてもらったのだが、11月14日の埼玉県民の日(県制定の休日。学校が休みになったり電車がフリーきっぷになったりする)と重なったため
そこら中に溢れかえっている人(半分は埼玉県民?)を押し除けながら、パーク内の最寄りのトイレに入る
だがすでに入口付近から大を並んでいる列が出来ていて、俺は5番目だ
んんん・・・他のトイレを探す余裕は無い・・・早くしてくれ・・・
大の個室は3つ
数分が経ち、奥から2番目、次いで3番目が空いて、俺は列の3番目に繰り上がる
すると背後から制服姿の中学生が入ってきて(まだ背が低いから中1くらいか?)
1番奥の個室の前まで行き、扉をノックし
「上田大丈夫か?早くしろよ」と声を掛けている
「うん・・・紙が・・・」
「えっ?紙がないの?」
その会話を耳にして初めて気付いたのだが
個室の並ぶ1番奥に棚があり、そこにお供え物のようにトイレットペーパーのロールが1つ、置いてある
「ここに1個あるけど?投げようか?」
「ううん、大丈夫・・・」
「紙あるの?」
「ううん・・・」
「じゃ、早くしろよ?」
そう言って小さな中学生は出て行った
上田くんはいったい、どうしたのだろう?
紙にどんな難があるのだろうか
あそこには入りたくないな・・・
まあ最悪、あの棚のロールを持って行くか・・・
俺の前に並ぶ2人もおそらく、同じことを思ったはずだ
そうこうしていると2番個室が空いた
ひとり入り、俺は2番目に繰り上がる
それからまた数分経った
俺の我慢も限界に近い(あの、爪先立ちしたくなる感覚)
3番目(いちばん手前)の個室が開き、ひとり入る
ようやく俺は先頭だ
が・・・あの1番奥の上田くん?
俺が並びだしてから2番・3番とも2回転しているのに、一向に出てこない
よほどのアクシデントなのか?
友達が様子を見にきたくらいだし。
しかし「紙が要る」とも言わなかったしな・・・
さすがにこれだけ長時間、個室に篭城しているのだ
もうそろそろ何かしらの問題を解決して、彼は出てくるだろう
俺は、奥が開けばロールを持って入ろうと身構えていた
・・・と、水を流す音がして真ん中の2番個室が空いた
良かった~
難を逃れそうだ
小走りで個室に入る
すでに限界点を超えていたため急いでズボンを脱ぎ、しゃがむと
まるでドラゴン花火のような勢いで一瞬で「全て」が放出された
おっおおぅ・・・
開放されたぁ・・・
座ったまま気が抜けていると、右隣の上田個室でずっとゴソゴソ音がしているのに気がついた
この長時間、君はいったい何をしているのだ??
尻洗浄も済ませ、個室を出たが、未だ上田くんは籠ったままだ
トイレの外に出る
周りを見渡すが、先ほど様子を見にきた学生もそれらしき集団も見当たらない
上田、見捨てられたか。
おそらくだが・・・上田くんは詰まらせたのだ
流しようがなく、外にも出られず・・・といったところだろう
いつ意を決するか
彼の人生におけるプチ分岐点だな
立ち会わないけど。
※ちなみに11月13日は茨城県民の日
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