第757話 例える

「おまえドンジャラ強いからって雀鬼になったつもりか?!」


助手席の谷やん(34)が、先程から運転の雑な森くん(23)に注意する


谷やんはアホだが、若い頃はプロを目指した街道レーサーだったから何かと細かい


森くんはピリッとしたようだが、後部座席の俺には今ひとつ意味がわからん


というかなんというか、上手い例えしてやった~感の谷やんの顔がウザい


少し間を置いてから俺は、後部座席から声を掛ける


俺「なに、森くんドンジャラするの?」


森「いえ、ドンジャラ自体がわかりません」


「えっ、じゃあなんでドンジャラなん谷やん?」


「いや、だから、車のゲーム上手いからってホントの運転上手くならんよっていう」


「車に関係ないやんかドンジャラ」


「だから、車も一緒でゲームが上手でも運転はうまくならんぞっていう」


「それやったら『グランツーリスモ』上手くても運転は上手くならんぞ!とか言うたらええやん」


「いやそうなんですけど、ドンジャラ先に思いついたから」


「思いついたからってドンジャラ言われても森くん意味わからへんやんか」


「そうなんですけど!先に思いついたから言っただけで!」


「先に思いつこうがどうしようが運転に関係あらへんがな」


「はいすみませんすみません俺が悪かったです~!」


「なんなんその投げやりな物言い」


「Tさんこそいっつもいっつも!なんで俺ばっかり揚げ足とるんすか!」


「揚げ足なんか取っとらへん」


「取ってるじゃないすか!!」


「取ってる」


「取ってるんじゃないすか笑」


「ごめんね」


「いいすよ別に」



毎回毎回、我々のこんなやり取りばかり聞かされている森くん


森「前から気になってたんですけど」


俺「どうした?」


「僕ってネタの練習に使われてます?」


あ~森くん、それは半分正解・半分不正解だ


俺はネタだが谷やんは「素」だぞ、アレ


「いやいやいや笑 同じこと谷さんに聞いたら『俺はネタやけどTさんはあれ、天然』って」

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