第732話 高良くんの彼女

ウチの高良(たから)くん(23)が彼女と歩いていて


噴水横のベンチに忘れ去られた女性モノの赤いハンドバッグを見つけ


周囲を見渡したが、いつから置かれていたものかも分からず


「どうする?とりあえず交番に届けに行く?」と彼女に尋ねると


「ちょっと待って」


彼女がそのバッグを手に取り、おもむろに耳に当てる


「・・・なんかカチカチいってる!!」


慌てた彼女がバッグを高良くんに放り投げてきたので


「なんで俺に!」


投げられたバッグを「ばん!!」と手ではらい、地面に落ちる


「そんなことしたら爆発するじゃん!!」彼女が走って逃げようとするので


「ちょっ!待って待って!!」自分も慌てて走り出すと


周囲の数名もつられて「わぁっ!!」と走り出したため


現場はプチパニックに陥った


そこに逆方向から血相を変えて走ってきた年配女性が


バッグを投げた彼女・叩き落とした高良くんを睨みながらバッグを拾い上げ


ものすごく怒った顔で去っていった


「なんか、お前のせいで逆ギレされたじゃん!!」


彼女に文句を言う


「だってカチカチ言うから怖いでしょ!!」


「それお前の腕時計の音じゃないの?!」


えっ・・・という顔で自分の腕時計を耳に当てた彼女が


「あっ私のだ!!」と言う


つられた周囲が苦笑いする中、初老の男性が


「いまどき爆弾がカチカチなんて・・・」と呟き


その呟きを聞き逃さなかった彼女が


「すみませんでしたぁねぇ!!」その男性に叫ぶと


「なに君その態度?!」と男性も語気を強めたため


「ほら、どうにかして!!」彼女が高良くんを男性に突き出した



「大事なのは自分だけ、という部分において鬼滅の無惨に近いですね、彼女は」


鬼滅は知らんが、そうらしい。

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