第721話 感情の起伏

コンビニから袋をぶら下げて出てきたお爺さんが、ゆっくりゆっくり歩道を歩く


ふと立ち止まると、ゆっくり屈みはじめた


歩道脇に落ちていた、茶色と緑色の混ざった木の葉を拾い上げると


眼の前まで持ってきてジーッと眺めていたが


「だめ〜!!」


声を上げると木の葉を投げ捨て、またゆっくりと歩き始めた


何かの基準に満たなかったのだろうか


「この時、老人の胸中にはどのような思いが到来していたのであろうか・・・」


お爺さんの背後を歩く、隣の金城くんが言う


「なに?金ちゃん分かるの?」


「おなかでも空いてるんでしょ」


なんだ、言う割には素っ気ないな。


すると突然、お爺さんが後ろに向き直り


投げ捨てた木の葉を目で確認すると


「だめ~っ!!」


右足でダン!ダン!と踏み付けたあと、また前に向き直り、ゆっくりと歩きだした


「おなか空いてるのじゃないみたいやな」


我々は、踏まれて裂けた木の葉を見下ろす


ただの葉っぱだ


「誰かの顔にでも見えたのでしょうか」


・・・と、前方のお爺さんが


「奥さん奥さん奥さん~♪ 好っき好っき~嫌い嫌いっ♪ 」


謎の鼻歌を残し、上機嫌で銀行に入っていった

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