第691話 主従関係

新大阪で、のぞみグリーン8号車の乗車口に並んでいる、前の2人


1人は華奢で153cmくらいの、グラサンを掛けているが色っぽい40代の女性


もう1人が、堅気なのか筋者なのか一見わからない、50代で185cmくらいの浅黒くガタイの良い男性


新幹線が到着し、乗り込む


その2人は11番のCDに座り、俺は斜め左後ろの12番Aだったが


すぐにトイレに立ちたかったので、Aには荷物を置き、Bに座る


トイレは、前の7号車にあるが、使用ランプが点灯中なので、しばし待つ


そのうち通路側C席に座っていた11番の男性が、右のD席の女性に向いて


低く小さな声で「やっと出発したにゃ」と言う


ん?「にゃ」て言ったか?


俺からは見えないが、女性に反応はない


男「おーいシカトすんにゃ」


女「黙って」


男「なんだおー」


次の瞬間、まともに見えてしまったのだが


「ピシャッ」


右に向いている男性の左頬に、平手が飛んできた


「なにすんじゃコルァ」


小声だが、男性は明らかに怒気を孕んだ口調で女性に喰ってかかる


「お前舐めんな」


男性は畳み掛けて女性を威嚇する


「だ~れに噛み付いとぅねんウチがワレにビビったことあるんか、おぅコラ?はぁん?!」


そう女性に返され、黙って正面に向き直る男性


「お前つぎニャーニャー言うたらエグるぞ」女性が念押しする


恐っわ・・・


前方のトイレ使用中のランプは消えたが、すぐ席を立つと2人が


"今の一部始終を聞かれた?"と思うかも知れないので、暫し間を置く


そのうち背後から、パーサーの女性がおしぼりを配りにきた


12番の俺が取り、11番の横に来たパーサーからおしぼりを受け取った男性が


「あっ、どうぞ」隣の女性に渡す


無言で受け取る女性


俺は席を立ち、前の7号車のトイレで用を足し、戻る際に、さり気なく2人を見て


・・・思わず吹き出しそうになって堪えた


うつむき加減の男性が


揃えた膝上に、真ん中から大きく開封したポテチの袋を両手で支え


右手に紅茶花伝のピーチティーを持ち、足を組んだ女性が


窓の外を眺めながら、たまにポテチに向き直って食べていた

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