第586話 ポイント

イオンモールの広い待ち合わせスペースの片隅で


30代の女性が立ったままスマホをいじっているのだが


そのスマホに付いているストラップの紐が超〜長い


胸元で持っているスマホからだらりと垂れた紐は、女性の脛(スネ)あたりまで垂れ下がっている


そんなのでエスカレーターとかに巻き込まれたら危ないよ?


さて、こちらも買い物の待合せだ


女性をじーっと観察していた訳ではないが、何処からか3歳くらいの、髪の長い女の子がフラフラ歩いてきた


女の子は、長〜く垂れ下がったストラップに吸い寄せられるように近付いてきたが、女性はスマホ操作に夢中で全く気付かない


ついに女の子が女性の真下に来る


そして


ぐいっ!紐を引っ張った


「あっ!」


女性の手元からスマホが滑り落ちる


ガン!


女の子の頭頂部にスマホが当たり、床に落ちた


ギャァァァー!!。・゚(´□`)゚・。


大号泣の女の子


「えっ?!えっ?!だいじょうぶ?!」


状況が飲み込めず、屈み込んで女の子をあやす女性


そこに母親と思しき女性が慌て駆け寄ってくる


「ちょっと!◯◯ちゃん大丈夫?!」


キッ!とスマホの女性を睨む母親


「あっ!いえ!あの!この子が!!」


うわ〜俺、初めから見てたよ〜助太刀してあげた方が良いのかな?


助けるか助けまいか躊躇している間に、初老のおばさんが近づいていく


「あのね、このお嬢ちゃんがね、お姉さんの紐を引っ張っちゃったの。そうしたらね、落ちちゃったの。お姉さん悪くないのよ?携帯大丈夫だった?」


そう説明された母親は、逆にスマホの女性に平謝り


母親が、まだ号泣している女の子を連れて行ったあと、スマホの女性は「ありがとうございました」おばさんにお礼を言う


「いいのよ。でもね、あなたも長いわよ」


「あっ・・・はい」


拾った後も垂らしたまま持っていたスマホの長〜いストラップの紐を、恥ずかしそうに手繰り上げる


「ずーっと携帯ピコピコ触ってらしたでしょ!ずーっと!あれは長いわよぉ〜」



それは自由じゃないの?

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