第529話 状況判断

沖縄でトラック運送業を営む67歳のO社長


若い頃は一時期、組も構えていたのだが


なかなかシノギが厳しく解散→トラック(砂利運び)業へ、という人生


首から下は全身刺青、今も血の気の多さは変わらず


更に琉球空手の段持ちで、若い頃は何でも破壊しながら闊歩していたので、相当恐れられたそうだ


実際に行く先々で「あの人の現役の頃はもう、それは・・・」なんて聞くので、本当なんだろう


50代で大病を経験されてからは随分と痩せて、昔は「山のフドウ(北斗の拳)」のような体格だったが、今は細っそりとしてらっしゃる


昨年12月に会社を訪れた際、那覇でチンピラ数人に絡まれたが返り討ちにした、という話を伺った


O社長が暴れて留置所に入れられ、のちに正当防衛で釈放された・・・という話は別ルートで知っていたので


「アホですねそいつら・・・社長と知っての事ですか?」と聞いてみた


「あー彼らは知らなかったよ。わー(俺)が金、持ってるように見えたのさ」


言ってみればカツアゲ+親父狩りみたいな状況だったそうだ


こちらは社長1人、相手は5人というから、還暦を超えてなお、どれだけ強いか分かるというものだ。


「だけどね、やっぱり怖いよ。若い奴は何持ってるか分からないからね。だから買ったのコレ。通販で」


そう言って社長は左腰あたりから何かを抜き、シュッと振る


シュパパパパッと伸びたそれは、長さ90センチほどの警棒


「社長には不要とちゃいますの」


「いやいや、もうオジーだからな。更に、ほれ!」


今度は左手で右腰のホルダーから抜き出したものを振ると


同じく警棒がシュパパパパッと伸びる


「どう?二刀流」


「2本持ちやと逆に動きにくくないすか?」


「そんなことないよ。ちょっと掛かってきてみてよ」


社長は、俺も格闘技上がりなのを御存知なので


右からタックル・左から殴る・背後から蹴る、といった様々なシチュエーションを俺に指示する


そんな、社長室で組手みたいなことをやっていると、女性事務員がお茶を持って入ってきた


我々2人を見た彼女が「あっ?!」と背後に振り返り


「誰かきて!社長があぶない!!」


いやいや俺、素手ですけど(;´д`)

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