第468話 命名

お世話になっている奈良お住いの社長が、新たに地元でビジネスホテルを建てることになり


ほぼ内装も完成したというので、見学させてもらうことになった


この社長、大の釣り好きでウチのお客様でもあるのだが


ここが大宴会場、と紹介された広間の前で「『アマゴの間』にしよう思うねん」


その隣の小宴会場を「『ジャコの間』にしよう思うねん」と言うので


ギャグですか?と聞くと本人は至って真剣


逆に「あかんのか?」と機嫌を損ねたので「いやいや良いと思います!」と持ち上げておいた


2ヶ月後


開業の挨拶状と共にパンフレットが送られてきたので、気になっていた宴会場を見てみる


大宴会場は「鳳凰」・小宴会場は「朱雀」


ありきたりの名が付けられているので、やはり冗談だったかとLINEを入れた


「おめでとうございます!アマゴとジャコの間、本気で期待してましたのに笑」


すぐ返信がきて社長がボヤくには


実際に命名する段になって「本気でそんな名前つける気だったの?!」と奥様にたしなめられ


であれば「アマゴの間」は許すかわりに、小宴会場を私に命名させなさいと交換条件を出され


なんと名付けたいのかと訊ねると「紫耀の間」だと言われ


それは何由来 (ゆらい)なのかと聞くとKing &Princeのメンバーの名前だという


それが奥様イチ推しのアイドルとわかり


そんな私的な名前、付けさせる訳がなかろう!と文句を言うと


アナタだって好きな川魚の名前じゃないのよ!何が違うのよ!と反論され


結局凡庸な命名になったそうだ

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