第455話 ある男女の会話

23時。大阪の、馴染みの小料理屋のカウンターで一人飲んでいた


カウンターの隅では、服装から結婚式の帰りだろうか、50代の男女がしみじみと飲んでいらっしゃる


女「今日は、ちゃんと正面向いて謝ろうと思って。あんたには、甲斐性ないって、あの子と長い間引き離してしもたこと、本当にごめん。今こうやって、こっちで元気にやってて、彼氏も見つけて再婚するあの子見てて、本当に幸せそうで・・・ありがとう本当に。今までごめんなさい」


男「いやいや、正直、あんたには甲斐性ない!って2人が出て行った時、ホンマに俺は何も出来ん男やった。十何年もあの子を育ててくれて、こんないい子にしてくれて、もう感謝しかない。いま俺がやっていることなんて罪滅ぼしのかけらにもならん。今までホンマありがとう。・・・しかし、またこうやって穏やかに2人で飲む時が来るとは思わんかったわ」


「そやなぁ・・・あんたも成長したなぁ。初めは私の追っかけやったもんなぁ」


「だれが追っかけやねん」


「あんたいっつも金魚の糞みたいにずっと付き纏(まと)ってたやん」


「だれが金魚の糞じゃ!お前かて毎晩毎晩、夜中に『寂しがり屋やの~』とか言うて電話掛けてきたやんけ」


「ここで言うことちゃうやろアホ!(バン!と背中を叩く音)」


「痛っったいんじゃボケ!お前その手癖、ホンマどうにかせえや!」


「お前がしょ~もないこと言うからやろ!!」


「お前とはなんじゃコラ!」


「はぁん?!」



大将、そろそろ止めた方がええぞ・・・

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