第429話 待合室にて

ガソリンスタンドで、車内の清掃をしてもらう間、待合室で待機する


待合室に入ると40代の男性が自販機でコーヒーを買っている


あ、俺も買おうと自販機に向かうと、その男性が「こんにちは」と挨拶してきた


「あ、こんにちは」


全く見知らぬ相手だし、待合室で居合わせたからといって特に連帯感もない


なのに話を続けてくる


「お客さん、あの黒の◯◯ですか」


「え、まあ」


「なるほど。あっちでね、洗車してるの。あれ、私のなんです」


車を褒めて欲しいのかどうか分からんが、水飛沫しか見えん


俺はニコッと愛想笑いをしたが、椅子に座るとスマホを取り出し


それ以上のコンタクトはしてくるな、という意思表示を全身であらわす


それに勘付いたのか、男性は話し掛けてこなくなった


暫くして俺の名前が呼ばれたので立ち上がる


待合室の出口に向かうと、背後から


「えっ無言?」と声を掛けられたので


イラっときたが、コイツの上に被せねば負けたみたいになる気がしたので、振り向き様


「I'll be back.」


ニヤッと不気味に笑ってやった(戻る気はないが)。


表に出てEneKey(ENEOSの電子キー)をスタッフに渡・・・あれ?ないぞ?ていうか車のキーもないぞ?


あ、待合室・・・


6秒でI'll be backした

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