第424話 鳥カフェ

俺はモモイロインコ・オキナインコを飼っていた関係で鳥が大好きだ


仕事が繁忙し、まともに遊んでやれない日が続いたので、モモイロは下の娘・オキナは孫娘に譲ったが


今はまた、次の相棒を犬するかインコにするか、とても迷っている


関西に降り立つと必ず、ふらっと1人で立ち寄っていた鳥カフェがあった


一時期休業されていたが、今は場所を移って再開されているようだ


初めて訪れた時は、客先訪問の合間だったのでスーツ姿だった


訪れると店員さんは少々戸惑ったようだ


おおよそ女性やカップル、家族連れしか来ないようなところに


いきなり組幹部みたいな態(なり)の、真っ黒に日焼けた男が現れたのだから、そらぁ不気味だろう


「私、こんなですけどインコ飼ってまして・・・」と伝えると警戒が解け、笑顔で招き入れてもらった


その時は俺の他に女の子が3人、来ていたのかな


テーブルに座り、気に入った子(インコ・オウムの種類)を伝える


すると、1羽につき10分ほど、順番にケージから出して俺の座るテーブルの止まり木に置いてくれるのだ(俺の場合、鳥カフェというよりは鳥キャバか)


皆、慣れた鳥たちだから人間を怖がりもしない


初めに出して貰ったのはオオハナインコの男の子だったが


店員さんに、スーツお気をつけくださいと言われたにもかかわらず


腕に乗せていきなり噛まれた


あいやー(゜o゜;;


すごいパワーだ、甘咬みなのにスーツが2センチほど切れてしまった


とそこに、女の子3人組のところにいたオカメインコが飛んできて、俺の左肩に止まる


おっ、やはり鳥を飼っている人間は判るのだろうか


「すみませ~ん」オカメは直ぐに店員に連れていかれた


その後も2匹、違う種類を出してもらう


側からみればスーツ姿のヤクザのような男が鳥と戯れるの図、は異様であったろう


30分ほど居たのかな、まったりとした時間を過ごし、店を出る


1時間後。


アポを取っていた客先に赴き、応接に通された


現れた社長さんが目敏く、俺の右腕のスーツの破れを発見


「どうしたんや、何処かに引っ掛けたんか?」


そう聞かれたので、実は斯々然々、鳥カフェに寄ってましたと説明する


「また似合わんとこに・・・」と笑われたが


「そうでもないですよ。私が鳥を飼っている優しい人間、というのが分かるのでしょうね。1羽逃げて飛んできましたから」


座ってそんな話をしていると、事務の女性がコーヒーを持ってきてくれる


俺の前にカップを置こうとして、彼女が中腰のまま止まる


ん?と左手の彼女をみる


社長も「どないした?」と声を掛ける


「いや、あの」と言って彼女は、コーヒーを置いたあと本棚の上にあるティッシュの箱を取り


「ちょっと失礼します」俺の左肩をティッシュで拭く


「何か付いてました?」


「あの、ウンチが笑」


「えっ?!」


思わず立ってスーツを脱いでみる


左肩に、アゲハの幼虫そっくりのウンコ(ちなみにアゲハの幼虫は緑だが、孵って直ぐは、鳥に食べられないよう鳥の糞に擬態した茶色だ)が乾いて付いている


チャコールグレーのスーツに焦げ茶のウンコは相性良すぎだろ。


・・・って!


更に水っぽかったのだろうか、テロ~っと背中に流れた跡がある


あいつ・・・ウンコしに飛んできたんか。


「Tくんさっき、自分は優しいから鳥が寄ってくるみたいなこと、言ってなかった?」


社長に大笑いされた

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