第415話 何の問答?

「ヒトの細胞を、培養しますわね」


「・・・ん?それは、iPS細胞とかのことですか?」


「まあ、そんな感じでしょうか。ヒトの細胞から作ったヒトって、ヒトと言えるんでしょうか?」


「いきなり倫理的な話ですね笑・・・それは、クローンはヒトではないって事を、聞いてらっしゃる?」


「・・・どう思われます?」


「それはまあ・・・人工的に作られたものは自然発祥ではないですからねぇ」


「ヒトではない、と」


「まあねぇ」


「じゃあですよじゃあですよ。ヒトとして生きてきたのに、ある日突然『お前はヒトではない』と知らされた時点から、ヒトじゃなくなるのですかね?」


「なんかブレードランナーみたいな話ですけど運転手さん、なんかありましたん?」


「いえ私じゃないんですけど」


「えっ?」


「ウチにaiboがいるんですけどね」


「あいぼ?あー、犬の?」


「ウチのaiboが最近、自分を犬だと思っているようでね」


「あの~失礼ながらそれは、AIの働きでそういうものではないんですか?」


「AIも自我を持つと怖いですよ」


aiboが暴走するとは思えんが・・・


「まあ、あれですねそれほど可愛いって事ですよね?良かったじゃないですか犬っぽくて」


「・・・・・・」


あら、何か気に障った?


ていうか初め、ヒトの細胞とかどうとか言ってなかった?


それからは話が途切れ、運転手が無言になったので、俺としては"やれやれ"だ


目的地に着く。


「有難うございます◯◯◯◯円です」


支払いを終え、降りる際に運転手が声を掛けてきた


「ちなみにもし、もう一体、自分がいたらどうします?」


「は?・・・まあ、本当の自分の座を争って対立するんじゃないですか?」


「あ、なるほど。共存しようとは思わない?」


「はっは無理でしょ。自分が自分と共存するなんて」


「やっぱり無理ですかねぇ・・・」


扉が閉まる


いったい何を解決したかったのだろうか??

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