第407話 テクニック

ウチに出入りする常備薬のセールスマンが、ウチの女性陣から不評だと聞いていた


いちいち顔が近くに迫ってくるというのだ


先日遂に、女性陣を代表して事務のM嬢が先方に電話したようだ


翌日、新しい担当の女性が上司と共にやってきて


「前任が不快な思いを・・・」と、M嬢に平身低頭詫びている


その新しい担当の女性が若く可愛い感じの方だったので


逆に我々、男どもが接近するかもなぁ~なんて笑っていたら


「私、顔が近いから不快ってだけで替えてくれとお願いしたんじゃないですよ」M嬢が言う


「会社近くのコンビニで遭遇した時に態度が横柄だったんですよ。レジでお金を投げつけるというか。ウチでは営業スマイルでニコニコしてるくせに、相手によって態度変えるんだなって。余計不愉快になったんです」


あ~それはアカンね。


さてそれから2カ月後。


ウチの事務所の入るビルの裏手にお客様用駐車場があって


外回りから帰ってくると、見慣れない赤のコペンスポーツが停まっている


ほどなく、あの常備薬の女の子が出てきた


「あっ、お世話になります!」そう言って彼女はコペンの助手席を開けて薬箱を置く


「え!これ貴女の?会社の?」


「マイカーです」


「ちょい待ち、これ結構イジってるよね?貴女の趣味?」


「趣味なんです~お恥ずかしながら」


「えっ!格好良えやん!!」


その後、立ち話で数分、彼女のこだわりでチューンした箇所を説明してもらい(そのコペンはFF/5MT)


女性で若いのに、車に関する知識の豊富さに感心しながらも、あまり長く引き止める訳にもいかないのでお見送りする


「では失礼します!またこの続きお話させてください!」


そう言って彼女はエンジンをかける


「じゃあまたね、気を付けて!」


爽やかに会釈しながら彼女が発・・・


ステアリングミスで隣の小学校に突っ込みかけた

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