第392話 ラストワン賞

結構前になるのだが、とある夕方、道沿いの某コンビニに車を止め、入店した


惣菜とお茶を持ち、レジ待ちの列に並ぶ


自分の前には5人ほど並んでおり


先頭のおばちゃんが、会計を済ませたあと店員に促されて箱からクジを引く


「おめでとうございます!ラストワン賞です!」


えっ?という顔のおばちゃんに、30代の女性店員が「あちらのお好きな商品を」と


左斜め後ろの、高さ1800くらいの棚に手を向ける


「いや、でも・・・」おばちゃんが後ろを振り返り


自分の後ろにレジ待ち客が数名いるのを確認し


「わたし別に要らないんだけど・・・」と申し訳なさそうに言うのを見て


横から別の店員が「次の方こちらどうぞ」と、レジ待ち客を隣のレジに誘導したので


おばちゃんは列から外れ、先程の店員に「じゃあ、あの車・・・」と


ラジコンのラリーカー?を指差す


店員は棚に近付き「これですね」と手を伸ばすのだが商品に届かず


背伸びして箱に触れたのだが、逆に奥へと押し込んでしまった


「少々お待ち下さいね」


店員はレジ横から箸を二膳取り、それでクイッとやろうと思ったのだろう


背伸びして箸で箱を掴もうとするのだが、滑ってなかなか取れない


「あの〜、もうその隣のお人形さんでいいですよ」とおばちゃんが言う


店員が「すみません・・・」と申し訳なさそうに横のクマのぬいぐるみらしきものを取り


お待たせしました・・・とおばちゃんに手渡す


おばちゃんは、図らずも時間が掛かって注目を浴びたからか、逃げる様に店を出て行った


別に気にしなくてもいいのに・・・と考えていると俺の番がきた


「クジを1枚どうぞ」と促され


あ、俺も引くのねと別の箱に手を突っ込んで・・・あれ?


「もしかして最後かも」と店員に伝えると


「あ、ラストワン賞ですね」確認した店員が俺と顔を見合わせる


だってあの"取れない"ラジコンやろ・・・?


「急いでるし、いいですよ」と言ったのだが


「お名前伺いますので、お手数ですがまた取りに来て頂ければ」と言われ


たまたま寄っただけなんだけどなーと思いつつ名前を伝え、店を出た


再びそのコンビニを訪れたのは、ほぼ2週間後だった


記憶が曖昧で、場所が定かでなかったこともある


流石にもう無いかな・・・


そーっと入り、遠目からレジ後ろの棚を見る


A3白紙にでっかく「T様」と書かれて、それはあった


取りやすい場所に置かれて。


急に恥ずかしくなり


店員に見つかる前にと店を出て、二度とそのコンビニに寄ることはなかった


ごめんなさいね(^_^;)

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