第325話 応援します

新神戸駅の構内1Fに、三井住友と、りそなだったか、2台ATMがあるので立ち寄った


三井住友側を見るとスーツの男性が1人、操作中


離れて若い女性が待ち、更に離れてお洒落なヒゲ面の男性が待っている


結構いるなぁ


まあでも新幹線から降りてきたところだから、急いでる訳ではない


だが、3番目のお洒落なヒゲ男性は何やらソワソワしている様子


年の頃は40代


黄色のジャケット・真っ赤なシャツ・真っ白のスラックスに白いエナメルの靴、そしてベージュのパナマ帽


使い込まれた、インディジョーンズが持つような大きな革のトランクを側に置いている


これは相当ハイソな御仁だ

若くしてお仕事を成功させてらっしゃるのだろう


スーツの男性が去り、若い女性がATMに向かう


お洒落なヒゲ男性は、ソワソワからイライラに変わってきたのか、靴がコツコツ鳴る


それを知ってか知らずか、若い女性は割と早めに操作を終えた


女性が去ると同時にヒゲ男性は小走りでATMに向かい、操作を始める


相当慌てているのか、俺は背後4〜5mの位置に立っているのだが


「チッ!」「早く早く!」声が聞こえる


ピピーッ、ピピーッ

カードと明細が排出され、現金を鷲掴みにすると


男性は新幹線改札に向かい駆けて行・・・きかけて、ヒラヒラとATMの明細が背後に落ちる


一瞬あっ、と後ろを振り向いたが時間が無かったのだろう、男性はそのまま駆けていった


現金など着いた先で下ろせばいいだろうに・・・それ以前に貴方なら、カードくらい何枚でもお持ちでしょうに


さて、俺の番だ


ATMに向かいかけて、俺の左手に落ちている先ほどの男性の明細を、ゴミを拾う感覚でひょいと摘み上げる


興味が無かったといえば嘘になる

ご利用明細に目が行く


えっ?


そうか・・・

頑張れよ・・・



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