第280話 連れでしたっけ?

新幹線にて。


アナウンスが入り、そろそろ博多駅に着くので、席を立ち、車両後方の降り口にむかう


降り口には、キャリーケースを引いた30代前後の女性が2名、既に待っていた


「ほんと私、1人で何も出来なくて」


「私が居て良かったね」


「ホントだよ~この前もね、いつもなら友達がまとめて切符持ってくれるのに、私1人で買い物してて!切符持ったまま!」


「うんうん」


「そしたらね~気付いたら、無いの!切符!ちゃんと持ってたのに!」


「え~ヤバイじゃん」


「そう!でね?落し物センターに行ったらね、あったの!」


「へぇ良かったじゃん、ていうか今もそれ、危なくない?」


危なくない?と言われた子は、おそらく切符が入っているであろう、JRの紙製チケット入れを左手に握っている


「あ、これは大丈夫。ほら、上に向けてるし」


チケット入れのフタというか折り返し部分というのか、その側を上に向けて持っているから切符は落ちないよ、という理屈のようだ


「そういう問題じゃなくて。持っててそのまま落とさない?」


「大丈夫だよ~ほら、しっかり持ってるから」


「でもいつもは誰かに持ってもらってる訳でしょ?1人だと無くすことが多いって話でしょ?」


「そうなんだけど、ほら、今日は見てくれてるじゃん?」


"貴女が見てるから私は落とさないよ、ってか?いまいち根拠がわからん"


そんな事を心で突っ込みながら、自称「1人じゃ出来ない子」の左手に目線を置いていると


「私がずっと見てる訳がないんだから、財布に仕舞うとかポケットに入れるとか、したほうがいいんじゃない?そんなこと言ってるとまた無くすよ?・・・ねえ?」


無警戒の俺に向かい、突然同意を求められたので


初めから3人組だったかのようにゆっくり自然とウンウン頷いてしまった

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