第247話 コンプレックス

石川啄木じゃないが、自分の手を見ていて、ふと思い出したことがある


俺は指が短いので、あまり「パーの手」を見せたくないのだが


ある時、連れて行ってもらった店が昔ながらのカラオケスナックで


連れてきてくれた方と俺しか客がおらず


店側は、ママの他に2人女性がいて


そのうち1人の女性が、俺の好みにドンピシャな猫系のお顔をされていたので


話しているうちに周りも気遣って、2人きりの世界を作ってくれた


いつの間にかカラオケが始まり、俺は率先して歌うほうではなかったが


その女性から「そのお声で『何も言えなくて』歌って欲しいです」とリクエストされ


「じゃあ、君のために歌っちゃおうか」とか言いながらマイクを持ち


曲が始まったわけだ


綺麗な指してた〜んだね〜♫

知らな〜か〜ったよ〜♫


歌いながらカウンター越しに、彼女と手のひらを合わせる


本当に綺麗な指だ

しかし関節ひとつ彼女が長かった


何も言えなくなった

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