第222話 職質

職質というものは、受けたくてもそうそう受けるものではない


よくコワモテ芸能人が「俺ぁ数十ッ回、受けてるぜ」などとひけらかすが


ブラフか、あるいは警戒中の組事務所前をわざわざ通り過ぎたか


職質してくださいと言わんばかりの状態でわざと歩くから、そうなるのだ


俺もよく冗談で「ところで何回捕まったの?」と聞かれたりするが


街中で怪しい動きも見せない奴に職質なんてしない


とはいえ


「話をきこうか」と言われた事は過去2回ある


一度目は10年前、名古屋の錦


深夜、ホテルに帰る途中、路上で若者同士数人の喧嘩に遭遇し


通り道だったものだから「おいおいやめときなさいよ」と立ち止まっていると、ちょうどパトカーが来た


野次馬もいたから誰かが通報したのだろう


喧嘩の当事者たちは、頭に血が昇っているから掴み合いを止めない


周りの仲間たちも、逃げずに喧嘩を煽っている


で、警官が2人、車から降りてきて


「やめろやめろ」と言いながら、最後まで掴み合っていた2人を引き剥がす


そして俺に向かい「いい年して・・・なにやってるの?」と言ってきた


「・・・はぁぁ?」


喧嘩を止めようと立っていただけなのに突然そう言われたものだから、相当イラッとした顔をしたと思う


警官は「はいはい、ちょっと、いきさつ教えてくれる?」とパトカーを指差す


乗れと?俺に?

ふざけとるのか。


そこで当事者の若者の一人が

「このひと関係にゃーで」と言ってくれたので事無きを得たのだが


警官は謝ってこなかったな・・・(-_-)


二度目は神戸の三ノ宮だ


東門筋という繁華街で飲んだあと深夜2時‬頃、宿泊しているホテルへと向かっていた


ホテルに入る道の手前が、西門筋という通りなのだが


少し山手のライブハウスの前あたりで、十数名が二手に分かれ、対峙している


ああ喧嘩やな〜


野次馬根性もあって、ホテルに向かわずそちらに歩いて行く


近づくと、双方7~8名の30代の男どもが睨み合っているのだが、中には手に"持って"いる奴もいる


これはちょっとまずい・・・


酒が入っているのもあり、そのまま仲裁に入る


「ちょっとちょっと止めておきなさいよ、すぐそこ警察なの知っとるやろ?」


100メートル山側には生田警察署、100メートル海側東には生田前交番がある


こんなわかりやすい場所で喧嘩など、全く・・・


だが彼らは静止も聞かず


「こんかい」

「エグったる」


双方が突っかかりそうになった、その時


「やめなさい!」


通りの下手から警官が数人、走ってきた


「あっ」


喧嘩の当事者たちは一斉に、上手の山側へと走り去る


5人の警官のうち2人はそのまま追いかけたが、3人は現場で留まる


警「何があったんですか?」

俺「いや、私もよく判らないんですけどね」

警「何がきっかけなの?」

俺「いや、だから知らないです」

警「何処の人たち?」

俺「知らないですよさっき来たんだから」

警「う〜ん、ちょっと詳しく聞かせてくれます?」


追っかけて行った2人も戻ってきた


俺「ホテル戻りたいんやけど」

警「すぐそこなんで、ご協力くださいよ」


多勢に無勢だ

逆らおうものなら、国家権力は強引だからな


結局交番まで行き、集団との関係性を聞かれた


関係あるように見えます?

まぁ、見えるんかな・・・


喧嘩の仲裁なんてするもんやないですわ

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