第118話 アウトローな話

AM11時前、とある"夜の街"の昼間の裏路地を歩いていると


艶消し黒にペイントされた軽トラが止まり、道を塞いでいる


かろうじて横は通り抜けられそうだが、こんなところに誰が?


近づくと、運転席から坊主頭の上下黒のジャージの兄ちゃんが、電話しながら降りてきた


荷台後部のアオリ(荷台の囲いの部分)を外してガチャンと下げる


「そしたら入りますよ」


「強引に連れ出してもええですね?」


そう話しながら右手の風俗ビルに入り、階段を上がっていく


ほう・・・

何が始まるのだ?


通りの少し先に小料理屋の裏口があったはずだ


真っ黒な軽トラの横を抜け、店の裏口横の踊り場で佇む


昼前なので誰もいない

俗っぽい表現をすれば、"街はまだ眠っている"


暴力沙汰に巻きこまれるのもアホらしいが、経営者に顔見知りの多い一画だ


念のため、監視する義務がある


行きつけの居酒屋に、釣れたカツオを3本卸して帰るだけの通り道だったが。


まあいい

気分はアウトローだ


じっと風俗ビルに目を凝らす


あの兄ちゃんが、何階の誰に当たりを付けて行ったのか全く見当が付かない


が、モノの数分で声がした


「そっちじゃない!こっちだ」


「おい、階段気をつけろ」


徐々に降りてくる気配がする


そして


モッフモフの白い大型犬が、兄ちゃんにリードを引かれて出てきた


「偉いなぁ〜ケン、ほら!」


ケンと呼ばれた犬は、サッと軽トラの荷台に飛び乗る


アオリを上げて閉めながら、兄ちゃんは電話を掛ける


「いやぁ〜めちゃ賢いッスね!」


運転席に乗り、エンジンを掛け


大型犬を乗せた軽トラは、俺の横を通り過ぎ、角を曲がっていった


どこがアウトローなんだ

カトちゃんケンちゃんでやってたみたいなコントじゃねえか。


・・・さしずめ大型"ケン"は志村だな


しむけんに捧ぐ。

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