第99話 反応

夕方17時から、事務所会議室を使ってWEBセミナーを開くことになっていた

講師はU部長と大場くんで、ウチの若手5人と、社外から20名ほどが参加予定だ


定期的に開催しているので準備も万端であったが


最近モニターを70インチから80インチに変えたため、カメラ位置を変えてからは初めてのWEBセミナーとなる


16時40分ごろ会議室を見に行くと、ホワイトボードの映りを調整し終えたモニターは電源が切られている


外部の皆さんは45分からエントリーしてくるそうだ


俺はモニターとホワイトボードの間に立ち、すでに書き込まれた講習概要を見ていた


ほどなくU部長がモニターの電源を入れる


「・・・あれ?」


モニター側でU部長の声がしたので振り向く


「おっかしいな・・・」


画面に映るホワイトボードを見るU部長が首を傾げる


「どうした?」


「いや、さっきまでピント合ってたんですけど」


見ると、俺の背後に映るホワイトボードの、文字がぼやけて全く読めない


「さっきまで合ってたのに・・・なあ?」


会議室に入ってきた大場くんにU部長が聞く


「あれ?何でこんなにボヤけてるんです?」


俺の隣に立った大場くんが、自分と俺・ホワイトボードの映るモニターに見入る


U部長は手元のリモコンでカメラを左右に振ったりイン・アウトしたりしているが、ホワイトボードはぼやけたままだ


ちなみに俺と大場くんは鮮明に映っている


俺「・・・ってあともう1分ほどでみんな入ってくるんやろ?代わりのカメラとかないの?前に使ってたやつとか」


U部長「今から交換・・・う〜ん、さっきまでピント合ってたのに・・・」


「いやいや悠長なこと言うてる暇ないやろ?探してきたるわ」


小走りに会議室を出ようとすると


「あっ?」


U部長と大場くんがモニターを指差す


「直った?なんで?」


「えっ?」俺は再びモニターとホワイトボードの間に戻り、画面を見てみる


大場「あ!またピントが?!」


U「えっ?いま直ったのに??」


俺「どういうことや、接触か?」


「あっ・・・」U部長が俺に向く


「すみませんTさん、ちょっとフレームアウトして貰えますか?」


「あ、はい」指示通りカメラの映す範囲から外れる


「あ!戻った!!」


「え、なんで?」俺は再びフレームインする


「あっ、またピントが!・・・てかTさん!!笑」


大場くんが立っていても反応しないカメラが、なぜか俺が入ると俺にピントを合わせる


「カメラも『あっ・・・』ってなるんですかね笑」


前にU部長から、Tさんの頭はラーメン屋の煮卵みたいだと言われたことがある


まさかと思い、もう開始まであまり時間がなかったけれども、自席に戻りキャップをかぶって会議室に戻ってきた


フレームインする


反応しなかった(´ー`)

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