第64話 駅のトイレ

20年前、まだ大阪にいた頃の話


北新地で飲んだ帰りに、JRの駅のトイレに入った


かなりグダグタに酔っているが何とか、お気に入りのセカンドバッグは忘れずに持っている


その日は結構な「手持ち」があって、まあでも「俺に襲い掛かってくる奴などいない」くらい調子に乗っていた頃だったから


手持ちの金があろうと、俺からバックを盗む度胸のある奴なんざ、居ないだろうとタカを括っていた


で、トイレに入り小便器に立つ


立った小便器の前の棚?にカバンを置き、チャックを下ろす


チロチロと出始めた時に、背後から人が入ってきた


ちなみにそれまでは俺1人だった


振り向くとそこには、小太りの、不潔に長いウエットな髪を揺らした男が立っている


一瞬ドキッとしたが、オタクのような30代?のそいつを振り向いたまま睨む


と、ソイツがニヤニヤしながら

「あっ、そこにあったのか〜」と言いながら俺に近づいてくる


ちなみに俺はまだ、出ている真っ最中だ


振り向こうにも振り向けない


ズンズン近付いてくる男の狙いは、明らかに俺のセカンドバッグだ


「コルァ!ワレ!ええ度胸しとるのう?!」


男に叫んだが


「はっ?うるさいよアンタ」みたいな顔でしかめっ面しながら、男は近寄ってくる


うっわコイツ何やねん?!

こんな奴、初めてだ・・・


いやコイツ、こういうタタキの専門なのかも知れん・・・もしかしたらヤッパ(刀)持っとるかも知れん、と


止まらない小便を恨みながらゾッとしてきた


と、胡散臭そうに俺を見ながら男は


俺の左左隣の棚に置かれていた黒い折り畳み傘を取ると、走ってトイレを出て行った


・・・ビビって少しズボンに掛かったじゃないですか( ´д`ll)

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