第52話 大きぃなった

ウチには「イシくん」という30代の営業マンがおり


この子の身長が153くらいかな?コンパクトな造りの彼なのであるが


ある日、客先に向かおうとするイシくんを呼び止め、少し打合せをしたいが時間はあるかと尋ねた


「あっまだ大丈夫ですよ」


イシくんは、一度着た紺のスーツの上着を脱ぎ、打合せテーブルの椅子に掛け、座る


「すまん、ちょっとその前に」イシくんに断り、俺はトイレに向かう


オフィスを出て共用部のトイレに入り、用を足していると


扉が開いて、上着を着直したイシくんが隣の小便器に立った


あ、連れションに来たかと思いながら左手のイシくんに


「久しく見掛けんうちに大きぃなったんとちゃうか?」と声をかける


隣に立ったイシくんの頭の位置が、いつもより高い気がしたのだ


するとイシくんが若干、俺から身を引いたような感じがしたので


「なに逃げとるねん?」


声を掛けながら左を向くと、同じフロアの派遣事務所の社員だった


間違えた俺が悪いのだが


「久しく見掛けんうちに大きぃなったんとちゃうか」を


確実に違う意味に取ったやろ、お前・・・


別にお前のナニを、前から狙っていた訳やないからな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る