第20話 隠れる理由

ウチの釣り客用のコンドミニアムが入るマンションには


歴代、掃除担当のお婆ちゃんが居られたのだが


ちょっと見かけないな~と思っていたら最近、新しい方が来られていたようだ


前任の方がもうかなりのご高齢(86)で、交代された方は77のお婆さんだそうだが


どうやらその方


あまり人と関わりたくないのか


精神的に何か抱えてらっしゃるのか


姿を見せないのだ


人の姿を確認すると基本、サッと物陰に隠れる


あるいは通路脇にひっそり佇んでいたり


真っ暗な非常階段のど真ん中で座っていたり(これにはビビって声を上げた)


たまに仕方なく姿を現すが


こちらが挨拶しても全くの無言。反応なし。完全無視。


一度ゴミ回収の男性と立ち話をしていたので、耳も聴こえるし話も出来るなずなのだが。


前のお婆ちゃんが愛想良く、寮母みたいにお世話したがりの方だったので


余計コントラストがはっきりしてしまい


顔のことも、言っちゃ悪いが安部譲二がお婆さんになったような感じだし


・・・まあ、こんな人も居るのかな


ところが先日


マンション1階の駐車場に車を停め、エレベーターに向かう途中


掃除器具などが収納してあるロッカーの扉が突然 「びよよよ~ん」 といった感じで開いたので


ん?とそちらに目を向けると 「びたん!」 扉が閉まった


えええ!!Σ(゜Д゜)


風も無いのに・・・


恐る恐るロッカーに近付いてみる


扉が閉まりきらず微かに開いている・・・・・・あ。


あのお婆さんがいつも着ている、青い制服の裾が挟まっている


いる・・・中にいる・・・


もう怖いので直ぐその場を離れた

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