第6話 犬知恵
俺がもともと飼っていて、今は上の娘宅にいるシーズーのエス
この子は姉弟ゲンカ(小5孫娘・小2孫息子)が始まると、必ず母親を呼びに行く
・・・チクりにいくというか。
ところが先日、姉弟ゲンカが始まり、いつものように母親を呼びにいったが
母親は近所に出掛けており
荷物を持ってきたついでに少し立ち寄っていた俺しかいなかった
エスは母親がいないのを知ってダイニングから玄関へと走ってきたが
2人のケンカする声が聞こえた俺が、靴を脱いでリビングの2人のところへ行こうとすると
俺の前に立ち塞がって、上目遣いで俺を睨む
ああ、「母さんの代わりに来てくれる?」とでも言いたいのだろうか
「分かったよ」歩き出そうとした俺に
うわん!
吠えると同時に胸元に飛びかかってきた
思わずそのまま抱えると
がぶっ!
俺の右上腕を噛みやがった
結構、本気のやつだ
「こら!痛いなぁ!」
エスを下ろす
「何で噛むの!」
うわわん!
「通さないつもりかぁ?」
うわぉん!
何を怒っとるのだこの子は・・・??
エスを無視してその脇を通り抜ける
と、今度は背後から飛びついてTシャツに噛み付いた
完全にTシャツにぶら下がるエス
「こら!エス!下りなさい!こら!」
俺の声に、リビングで言い合っていた孫2人が飛んできた
「どうしたの?!」
エスはシャツに噛み付いたまま、ぷら~んとしている
「こらエス!おりなさい!」
孫娘が怒るが、ギョロッと視線を向けただけで微動だにしない
「何してるのよもう〜!」
孫娘に抱きかかえられてようやくTシャツを離したエスは
床に下ろされると、嬉しくて仕方ないという体でぴょんぴょん跳ねる
「何なん?エス?」
しゃがんで頭を撫でようとすると
うらー!!
俺の顔めがけて飛び込んできた
さっきはごめんね!
そんなとこなのだろう、ベロベロ顔中を舐めてくる
なんだこの変わり身は・・・あっ?
もしやお前、自分と元御主人様とのケンカで、2人の気を引こうとしたの?
そうだとしたら・・・なんて賢い子やのん(*´ω`*)
「ジージ!ジージ!」
孫息子が呼ぶ
「ん?なに?」
「シャツのうしろ、いっぱい穴あいてる!」
(-_-;)
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