屋上の四人

@kekumie

第1話 屋上の四人

出会いには別れが付き物。

そんな言葉がある。

どんなに中のいい友達だって、どんなに長く一緒に暮らしてきた家族だって、どんなに愛していた恋人だったとしても。別れは付き物で、そして突然やってくる。


みんな俺に投げかける言葉はほとんど一緒だった。

「別れは付き物なんだし、気にしなくていいよ」

「別れる日はいつか来る、それがたまたま今日だったってだけだ」

「きっとまたいい人に巡り合えるよ」

みんな口々にそんなことを言う。 

そんな言葉で彼女を諦められるものか。


ある田舎町には雨がしとしとと降っていた。

そんなある町のある学校、そしてその学校の屋上では二人の男女が傘を差して屈みながら座っていた。

「なぁ、なんで俺たち雨降ってるのに屋上に居るんだ?」

屋上に居る男がそう言う。

その男は比較的整った顔立ちで、黒い髪は首ほどにまで伸びていた。

その服装は一般的な黒の制服で、背丈は175cmほどと他の人と比べると少し高い。

「分かんない、なぜかいつのまにか居た」

そしてその男の質問に答えた女は長いまつ毛にきりっとした目つき、こちらも顔が整っていて髪は肩ぐらいにまで伸びている。背丈は165cmほどと他の人と比べて少し高い。

「なんでいるんだろうな」

雨が、しとしとと降っていた。


ある田舎町には太陽がさんさんと照っていた。

そんなある町のある学校、そしてその学校の屋上では二人の男女が足を伸ばすように座っていた。

「やっぱ屋上は日当たり良くて元気でるな!」

屋上に居る男がそう言う。

その男は黒い髪の毛を短く切り揃えており、やわらかな目つきをしている。その顔は笑っていて陽気だ。

背丈は170cmほどと他と比べても平均的だ。

「晴れの日はいつも居る気がするね」

屋上に居る女がそう言う。

顔は幼い顔立ちで、目がくっきりしていて可愛らしい印象を受ける。

黒い髪は腰ぐらいにまで伸びている。

背丈は155cmほどと他と比べると少し低いか平均的な身長だ。

「そろそろ戻ろっか」

太陽が、さんさんと照っていた。


ある日、雨が降っていたが晴れてきた。そしてそれを目途に屋上にいる男女

北宮 祐樹と刈谷 遥だ。

二人は持っていたビニール傘を閉じ、屋上のドアを開けようとしたとき、二人ではない誰かが屋上のドアを開けた。そのドアの前には二人の男女が立っていた。

太陽が照っていた時に屋上にいた男女だ。

四宮 築と回白 阿見鳥だ。

四人は三秒ほどの沈黙の後、軽く会釈してから祐樹と遥が隣を通り過ぎて行った。

ビニール傘から水滴が落ちた。

そして築と阿見鳥は一度視線を合わしてから

「なんで雨だったのに屋上にいたんだろうね、傘まで完備して」

「さぁ」

二人は少し考えたが、すぐに違う話題に切り替えた。


三日後、また雨が降っていた。

そして当然のように傘を差した男女二人が居た。

「雨って俺たちに似てると思わないか」

男のほう、北宮 祐樹がそう言った。

「憎まれ役を引き受けてさ、勝手に悪みたいな印象をつけられてさ」

祐樹の眼は少し悲しさに満ちていた。

「理不尽だよな、世の中って」

「でも私は雨好きだよ、いやな音を打ち消してくれる雨が。何かが浄化してくれるような雨が。そして、あなたと付き合える要因を作ってくれた雨が」

そう言ったのは刈谷 遥だ。

その顔は少し幸せに満ちていた。

そんな二人の会話を中断させるかのように屋上のドアがバンと勢いよく開いた。

そしてそのドアから二人の男女が出てくる。

四宮 築と回白 阿見鳥だ。

そして城の左手と阿見鳥の右手にはビニール傘が一本握られていた。

そして二人は祐樹たちに近づいていくと声をかけた。

「三日前すれ違った時から気になっててさ、今日雨だから居るかなぁと思って」

築がそう言うと

「気になったからなんで雨なのにわざわざ傘を差してまで屋上に居るのか説明してほしいなぁと思って」

築に続いて阿見鳥がつかさず言葉を続けた。

そしてその二人の質問に対して、祐樹と遥が声を重ねて説明をした。

「「雨が、好きだから」」

そう答えられると築と阿見鳥は少しぽかーんとして

「それ、だけ?」

「逆にそれ以外の理由でなんで雨の日の屋上に来るんだよ」

「いや、確かにそれもそっか」

そして築たちは祐樹たちと少し離れたところに屈んで座る。

「雨って好きか?」

それは築たちに一応聞こえるが小さな声で、まるで独り言のように祐樹が言う。

「まぁ、別に嫌いじゃないけど晴れのほうが好きかな。雨っていろいろ面倒くさいし」

「そっか」

そして会話が止まり、十秒ほどの沈黙が流れる。少し気まずい雰囲気だ。

「俺、小学校の時にさ」

そしてまた祐樹が独り言のように言う。

「運動会が嫌で嫌でずっと雨が降れって思ってて、そしてクラスで明日の運動会が晴れることを願うためにてるてる坊主をみんなで作ってさ。でもそのてるてる坊主翌日には全部ひっくり返ってたんだよ、なんでかわかる?」

祐樹が築たちに聞く。

「なんか心霊現象とかそういう感じの?」

阿見鳥が少し怯えたように答える。

「いや放課後に俺がみんなのてるてる坊主を全部ひっくり返したんだよ」

祐樹がそう言うと築たちのほうから笑い声が聞こえる。少し受けたようだ。

「でも結局は晴れでさ、そしてリレーでは俺がバトン落としたことでリレーで一位だったのを最下位にするし徒競走では最下位だしいいことなくて、そして結局てるてる坊主ひっくり返したことばれるし。あだ名が雨男になったり不幸男とかになったりしてさ」

ビニール傘が雨を弾く音が大きくなってくる。

屋上の床にもだんだん小さな水たまりができてきている。

「不幸だな」

と築がほかの人には聞こえないぐらい小さな声で呟く。

「雨の日とかの日って悪天候とかって言うじゃん。ひどくないか、雨がないと大変なことになるのに悪って」

築たちはすこし戸惑った表情を浮かべている。

その一方で遥は慣れたように話を聞いていた。そして築が口を開く。

「なんか、珍しいな」

「珍しい?」

「いやだってさ、いきなり雨について語りだすしさ。初めて聞いたもん、てるてる坊主全部ひっくり返す人」

「そういえばなんで二人は雨の日の屋上にいつも居るの?」

阿見鳥が質問を投げかける。

「雨が好きだから」

「雨って、俺たちに似てるなぁって思うから」

祐樹たちは同じタイミングで質問に答える。

「雨に...似てる?」

「そう、似てる。別に嫌われたいわけじゃないのにみんなから嫌われてさ。仲良くしたいのにその前に避けられるし」

「つまり...あなたたちは嫌われて避けられてる...と?」

阿見鳥がド直球な質問を投げかけた。

「そういうことだ。逆になんでなんでお前たちが俺たちを避けないかがわからない」

「どういうことですか?」

「こんな田舎じゃ、噂なんてものは絶大な効力を誇っていてさ。俺はこの噂のせいで避けられてる」

「どんな噂なんですか?」

「小学校のころ、一学年上のみんなから人気の女の子が居てさ。俺はその子と仲が良かったんだ。いつでも一緒に遊んで、夏は虫を捕りに行ってたりしてた。冬は家でゲームしたり、THE親友って感じだった。

そして夏休みが始まる一週間ほど前に川に行ったんだ二人で。

でも俺泳げないからさ、その女の子一人に泳いでもらってたんだ。俺はそれを川岸から見てた。そしてその女の子が溺れたんだ。目の前で。

周りには他の遊泳者も居て、すぐに助けを呼べば助かったのかもしれない。

そしてすごく苦しそうで、その姿見たら俺、腰抜けちゃって声でなくなっちゃったんだ。

そしてしばらくしたら他の人たちが溺れてるのに気づいて、急いで助けたんだけど...助からなかったんだ。

そして俺は、見ていた俺は最初は不幸な人。だったが最終的には俺がその女の子を殺したみたいな噂にまで肥大化してた。

まぁ、見殺しにしたって言われたらそこまでなんだけどな」

俺が長い台詞を言い終えると、重たい空気が流れていた。誰も口を開かない。

「なんか、ごめんね」

そしてやっと阿見鳥が口を開いた。

「まぁ何回も説明したこともある話だし別に今となってはそこまでなにも思ってないよ」

「そして私はその女の子の妹。私はもともとあんまり目立ってなかったからこいつ...祐樹と絡んでる変なやつって感じになってる」

そして遥が言う。

「なるほど...ところでスマホ持ってるか?連絡先交換しない?」

と言ったのは築だった。

「別に持ってるけど...俺たちは避けられてるんだって。お前たちも避けられるかもしれないぞ」

「大丈夫だって」

築は明るい口調で言ってポケットからスマホを取り出す。そしてそれに続くように「私も」と言って阿見鳥もポケットからスマホを取り出す

そして祐樹と遥もポケットからスマホを取り出し、連絡アプリを開き友達登録をする。

「祐樹と遥って言うんだな。よろしくな」

「築君と、阿見鳥ちゃんって言うだね、よろしくね」

友達登録を済ませると、築たちは用事があるようで屋上から去っていった。

そして祐樹たちは築たちが出ていくと、登録された名前をじっと見つめていた。

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