第90話 私の勘違い
「その、お店の中を覗いている人って…男の人か女の人か分かった?」
2人で並んで歩きながら私は尋ねた。
「ごめんなさい…そこまでは分からなかったわ。フード付きのロングコート姿だったと言うことくらいしか…」
私の質問にペリーヌは申し訳無さそうに首を振った。
「ううん、いいのよ。気にしないで。誰かが覗いているって事が分かっただけでも助かるかわ。実はね…一昨日はシビル達を呼んでお店の開店準備をしていたのだけど、その時にグレタが窓から視線を感じたって言うの」
「え?そうなの?」
ペリーヌが目を見開いた。
「それで皆で窓を見に行ったけど、誰もいなかったわ。その時は気の所為か、通りすがりの人が覗いていったのだと思っていたけれども…帰りに迎えに来たジムさんが私のお店の中を覗いている人物を見たっていうの。フード付きのロングコートを羽織った人物だと言っていたわ」
「まぁ…私が見た人物と似てるわね…」
ペリーヌが眉をしかめた。
2人で話ながら歩いていると、もうそこは教室の前だった。
「あ、教室の前についたわね。それじゃアンジェラ。また後でね」
「ええ、又ね」
本当はもっと話したい事があったけれども、この話は残念ながらここまでだ。続きはランチの時間に話す事にしよう。
そして私達は手を振って別れた―。
****
キーンコーンカーンコーン…
午前中の授業が終わり、昼休みに入った。
ペリーヌを待たせない為に手早く片付けをすませて廊下へ出ると、丁度こちらへ向かって来る所だった。
「お待たせ〜」
「大丈夫よ。まだシビル達も来ていないから」
すると丁度そこへシビルにグレタ、イレーヌが私達の方へ向かってやってきた。
「お待たせしてすみません」
イレーヌが代表して私達に声を掛けてきた。
「ううん、そんな事無いわ。それじゃ行きましょう」
そして私達5人は連れ立って学生食堂へ向かった―。
「ええええっ?!デリクさんが襲われたですってっ?!」
ペリーヌの声がオープンテラスに響き渡った。その声があまりに大きく、周囲に座った学生たちが一斉に私達に注目する。
「ペリーヌ、落ち着いて」
私は慌ててペリーヌに声を掛ける。
「え、ええ…」
ペリーヌはグラスの水を飲むとため息をついた。
「それにしても…背後からいきなりガツンなんて…酷いことしますね」
シビルが眉をしかめる。
「デリク先生の怪我の具合は大丈夫なんですか?」
グレタが尋ねてきた。
「え、ええ…多分大丈夫だと思うのだけど…何しろ私もまだデリクさんに会えていないから…」
紅茶の入ったカップをギュッと握りしめながら私は言った。
「心配ですよね…。でも犯人は誰なんでしょう?パメラかしら…」
イレーヌの言葉に私は首を振った。
「それは無いと思うわ…。多分…パメラはデリクさんの顔を知らないと思うから…あ、でも…」
私は自分が肝心な事を忘れていたことに気がついた。
「どうしたの?アンジェラ?」
ペリーヌが声を掛けてきた。
「ううん、私…大切な事を忘れていたわ。パメラはデリクさんに会ったことが無いと思っていたけれど、そうじゃなかった。この学食で会ったことがあるわ」
「そう言えばそうね。アンジェラがニコラスに叩かれそうになった時、デリクさんが止めに入ったものね。」
「ええ、その時パメラも一緒だったもの」
私は頷く。
「と言う事は…デリクさんを襲ったのは…パメラの可能性もあるって事ですよね?」
グレタが言った。
「ええ…そうね…」
一体、誰がデリクさんを襲ったのだろう…?
「早く警察が捕まえてくれるといいわね」
ペリーヌの言葉に私達は頷いた―。
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