第6話 台無しにされた私のランチ
午後1時の昼休み―
私とペリーヌは2人で一緒に、少し遅めのランチを食べる為に学食に来ていた。ここの学食は注文して食べることも出来るし、自宅からお弁当を持参してきた学生もここで食べることが出来た。
「アンジェラ、今日はお弁当を持参してきたのね?」
2人で並んで窓際のテーブルに座るとペリーヌが私の手にしているランチバックを見ながら尋ねてきた。今の時間帯は比較的すいており、ランチを食べに来ている学生もまばらだった。ちなみにペリーヌの今日のランチはスープパスタであった。
「ええ、そうよ。シェフに頼んでロールサンドを作ってもらったの」
籐で出来たランチボックスをランチケースから取り出しながら私は言った。
「ロールサンド?どんなものなの?」
「ほら、これよ?」
蓋を取り出して、中身を見せるとペリーヌは目を見開いた。中にはハムやチーズを巻いたり、ジャムを巻いたロールサンドが綺麗に並べられている。これも私の前世の日本での暮らしの知識からシェフに頼んでもらったのだ。
「まぁ素敵ね。こんな斬新なサンドイッチ初めて見たわ。それにこのランチケース…だったかしら?とても可愛らしいわね」
ペリーヌは私のランチケースを見ながら言った。このランチケースも端切れを縫い合わせてパッチワークにして、巾着型に作ってある。この世界ではまだ巾着というデザインの袋も広まっていない。これを大量に作って、近々オープンする私のお店に並べる予定だ。
「ねぇ、ペリーヌ。このランチケース…売れると思うかしら?」
不安に思って尋ねてみる。
「ええ、勿論売れると思うわ、だってこんな斬新なデザイン初めて見るもの。それに形もとっても可愛いし」
「そう?ありがとう」
その時―
「あら、アンジェラさんじゃないの?」
背後から聞きたくも無い声が聞こえて来た。
「パメラ…」
ペリーヌが憎々し気にパメラを睨み付けた。
「まぁ…何て怖い眼つきなんでしょう」
パメラは怯えた素振りをして私を見た。
「アンジェラさん…今朝はどうも」
「ええ…」
どういう意味で言っているのだろう。警戒しながら返事をした。それにしても…いつも一緒のニコラスがいないなんて…。
「プッ」
突然パメラが笑った。
「?」
訳が分からず首をかしげる。
「ちょっと!何がおかしいのよっ?!」
私と同じ子爵家の令嬢であるペリーヌが憤慨したようにパメラに文句を言った。しかしパメラはそんなペリーヌを無視し、私の方を向くと言った。
「今、ニコラスは私の為にお昼を注文しに行ってくれているのですよ?」
「あ、そう」
私は興味が無かったので適当に返事をして、ロールサンドに手を伸ばした時…・
「あら?何かしら?初めて見る食べ物だわ」
そしてあろう事か、私の前に置いたランチボックスをパメラは奪ってしまった。
「ちょっと、何するのっ?!」
これは余りに失礼な態度だ。流石の私も黙っていられない。
「返して頂戴。それは私の今日のお昼よ」
しかし、パメラは私の言葉を無視してランチボックスに入っているロールサンドを眺めている。
「へぇ~…面白いサンドイッチね…」
パメラがぽつりとつぶやく。
「返しなさいよ!」
ペリーヌは怒りの口調でパメラに迫る。すると次の瞬間…。
パメラは何故かニコリと笑うと突然私のランチボックスを床に落としたのだ。
ドサッ!
「!」
それは一瞬の出来事で、あっという間にランチボックスは床に落ち、全てのロールサンドが床の上にぶちまけられてしまった。
「あぁあ~。ペリーヌさんが大きな声を上げるから、思わず驚いて落としてしまったわ」
悪びる素振りすら見せないパメラに流石に怒りがこみあげて来た。
「ねぇ…それがわざと落とした人間の取る態度なのかしら?」
私はパメラを睨み付けた。すると…。
「ひ、酷い…わざとじゃないのに、そんな怖い目で睨み付けるなんて…」
パメラの目に涙が浮かぶ。な、なんて女なの…?
そう思った次の瞬間―。
「アンジェラッ!パメラに何してるんだっ!」
料理の乗ったトレーを持っているニコラスが私を睨みつけて立っていた―。
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