第15話
ジミルの紹介で、キューイと名乗る探偵と出会ったリンゼ。
「検察官の僕の仕事は証拠集めが基本でしょ? キューイは
こげ茶の薄い髪を一つに括り、ベレー帽に深緑のサロペットを着た庶民風の中年の細身の男。その見透かす様に光る黒い三白眼に、リンゼは少したじろいだ。
「ジミルのお坊ちゃんにはいつもお世話になっています。今回はこのお坊ちゃんが依頼人ですかい?」
「こう見えて、ハイライン宰相の息子だから、僕よりも報酬は多く貰えると思うよ!」
「……こう見えて……?」
報酬の事を出されて、キューイの目がギラリと光った。
「――で、あっしは何をすれば良いのでしょうかね?」
「ルイス王子とうちの国の姫様が結婚するのはご存じですよね?」
「へえ、イギルに住んでいたら犬でも知っている話ですね」
「大国の王太子であるルイス王子が、こんな小国の姫と結婚する理由を調べて欲しいのです」
リンゼは思ったのだ。
きっとユリアが縁談を持ちかけたのは間違い無い。
しかし、この縁談はルイス王子にとってどんな利点があるのだろうか?
彼は、ユリアから持ち出された条件を飲んで、エイミーと結婚する事を決めたのだ。
結婚は国同士の結びつきに重要な役割を果たすが、こんな小国の姫よりもハンナにとって有益な国はいくつもある。
「報酬はジミルがいつも渡す三倍を渡します。どうでしょうか? お願い出来ますか?」
「!!」
キューイは報酬額を聞いて、二つ返事で請け負った。
キューイが去った後、彼を紹介したジミルは「いやぁ」と驚きの声を挙げた。
「君って何でも一人でやるタイプかと思えば、使えるものは使うタイプなんだね」
驚くジミルに、リンゼは言った。
「そんな不効率な事していても、意味がないだろう? 自分が出来ない分野は誰にだってお願いするし、頭だって下げる。大事なのは『結果』だろう?」
「ふふ、キューイは僕のお墨付きの探偵だ。きっと良い返事をくれるよ」
◇
キューイに依頼をして四日経った日の夜。
執務室で一人、忙しい父に代わって雑務をこなしていると、背後に気配を感じた。
振り返るとキューイが立っていて、ベレー帽を取って頭を下げた。
「……旦那、お待たせ致しました。報告結果をお伝えしますので、先ずは報酬をお願い致します」
リンゼはキューイに催促されるがままに、用意してあった報酬を手渡した。
「へへ、毎度。こちらに
言いたいことだけを言うと、キューイは瞬く間に去って言った。
流石、慣れた探偵だ。
リンゼは仕事を止め、結果を見る。
そして内容を見て驚いた。
ルイスがエイミーを選んだ理由が、リンゼの思惑を逸脱していたのだから。
エイミーはハンナ国の正妃では無く、側室として迎えられると書いてあったのだ。
一国の姫がただの側室に!?
考えらえない、ふざけた待遇。
この事をイギルの国民はもちろんの事、国王だって知らないだろう。
そして、ルイスの後宮にはすでに側室が35人も居て、エイミーはその末席に加わるのだと書いてあった。
リンゼは真実を知り、何が何でも婚約破棄をしなければと立ちあがったのだった。
迫る結婚式までに!
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