知識は剣よりも強く、愛を育む

さくらみお

幕開け



 リンゼは床を見据え項垂うなだれる様に椅子に座り、その時を待っていた。



 ――始まる。


 大切な人を守るための裁判が……。



 緊張のあまり、早鐘を打つ心臓。

 それを落ち着かせるために、リンゼは身を起こし、深呼吸を一つした。


 身を起こして目に入るのは、質素な控え室に飾られた一枚の絵画。

 それは、イギル城から見た小麦の穂が風に揺れる金色の風景。


 リンゼはこの絵を選んだ主を知っている。

 この国の平和を守り、そして自分の家族の平和も願っていた姫を。


 部屋をノックする音と共に、深緑の軍服を着た兵士が姿を現す。


「弁護人、リンゼ・オイト・ハイライン。時間です」


 リンゼは立ち上がり椅子に掛けてあった、黒いジャケットを肩にかけ、白シャツ黒いネクタイ、黒のベスト姿のまま、法廷までの道のりを歩いて行く。


 

 法廷までの道を一歩一歩、踏みしめながらリンゼは再び誓う。



 絶対にお助けします、姫様……!



 法廷の入口でジャケットの袖に手を通し、リンゼは天を見上げ、光差す法廷へと吸い込まれていった――。

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