ランキングが見える俺、魔王に復讐する

ねこぽん

プロローグ

 俺は、唯一無二の親友を刺した。

 鈍く光る剣を両手で握り、刃先を深く深く押し込む。


 俺の突き立てた刃をその胸に受ける少女──リーシャ・フォン・アレクサンドリットは、死に瀕する者とは思えないような安らかな笑みを浮かべていた。

 まるで母が子を抱擁するように、大手を広げて刃を受け入れる。


 実に情けないことに、刺される側のリーシャよりも、刺している俺の方が涙を溢れさせていた。


 柔肌を貫く感触から、目を背けながら。

 自分の心の悲鳴を聴かないよう、耳を塞ぎながら。


 言葉にならない叫びが、明るすぎる夜空へと吸い込まれていく。

  

 燃え盛る帝都は、夜とは思えないほど明るい。


 栄華の象徴たる城も、比肩するもののない程の堅牢さを誇っていた城壁も、無辜の人々が豊かな暮らしを営んでいた街も。

 一夜にしてすべてが無慈悲に、理不尽に、平等に灰と化していく。


 硝煙と血の臭い。逃げ惑う民衆の恐怖の叫び。


 親友を、リーシャを殺したくなんかない。

 このまま全てを放り出してしまいたい衝動に駆られる。

 しかし、それは彼女に対する冒涜だ。


 今ここで、俺が、殺しきらなければならない。

 

……なんで。なんでこんな事になったんだ。

 もしも運命が人の顔をしていたら、その横面を拳で殴りつけてやりたかった。

 

 現実逃避気味に、脳裏に次々とリーシャと過ごした思い出の日々が蘇ってくる……。

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