第26話 決戦前
英傑の騎士団ギルド本部の医療室。
まだ目を覚まさないジェイクとゾルデア二人を付きっきりで看病をする一人の青い髪を三つ編みにした少女がいた。
作中のメインヒロイン。
謎の少女エリーシャ・ラルティーユである。
「あ、ラインハル。おはよう」
「おはようエリーシャ」
看病中にやってきたのはラインハルだった。
珍しく朝早く鎧を身に着け、聖剣を持っていた。
それもそうだろう。この後、彼にはやるべきことがあるからだ。
それは、この二人がこうなってしまったのはロベリアという魔術師に罰を与えること。
獣人族の姫を誘拐し、それを阻止しようとしたジェイクとゾルデアを徹底的に返り討ちにしたからだ。
結果、二人は今も目を覚ましていない。
「本当に、これで良かったのかな。私、別にラインハルの考え方を否定するわけじゃないけど、まだちゃんとした証拠もないのに、あの人を疑うのは……ちょっと気が引ける」
「それは君が優しいからだよ」
落ち込むエリーシャの頭を撫でながらラインハルは言った。
例え、極悪非道が罰せられそうになっても彼女は同情するだろう。
自分のことなんかより、他人を思いやれる優しい女の子だからだ。
「けど、黒魔術の使える魔術師といったらロベリアしかいない。間違いなく奴だよ」
「……でも」
「覚えているだろ。俺は仲間を傷つけられることが一番嫌いだ。二度と手を出してこないよう、奴の体に叩き込まなきゃならない」
「うん……」
「そろそろ行かなきゃ、二人のことは頼んだよ」
そう言いラインハルは険しい表情のまま医務室から出ていくのだった。
彼のことは好きだ、だけど今回はあまりにも一方的すぎるとエリーシャは思っていた。
ちゃんと話あって情報を照らし合わせれば真実に繋がるかもしれないはずなのに仲間達は怒りで、それすらしようとしない。
そして今、ラインハルはロベリアを断罪しようとしている。
「えっ」
二人を見守っていたエリーシャが声を漏らした。
ほんの僅かだが、動いたのだ。
ベッドの上で眠る、ジェイクの指が。
それが気のせいではないことは確かだった。
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