すみませんが、誰ですか?

ただの受験生。

第1話

朝目覚めたら知らない人が目の前にいた。

黒髪だけど窓からの日が入り、茶色っぽく

繊細に光っている。

「すみませんが、誰ですか?」

僕は知らない『誰か』に話しかけた。

僕の荷物をバックに詰めていたから泥棒か、

と思った。

「え、すみません。言葉を発してください」

『誰か』はずっと僕を無視してそのまま

扉を無造作に開けて出ていってしまった。

(誰だったのだろう。)

不思議には思ったがそれよりも驚くことが起きている。ここはどこだ。人を見すぎて無関心にいたがここは自分の家ではない。

「え、病院?」

そういえば見慣れない天井だった。なぜここまで気づかなかったのか、僕は馬鹿にでも

なったようだった。

起き上がって周りを見渡すと看護師が部屋に入ってきた。

「あ、起きたんですね。おはようございます。今主治医を呼んできますね。」

あ、はいと返事をする前に看護師はいなくなってしまった。なんだったのだろうか。

しゅじい?かんごし?びょういん?聞きなれた言葉も赤ちゃんが初めて聞くように意味を持たない言葉となった。少しすると医者っぽい人が入ってきた。

「神崎さんおはようございます。覚えていますか?」「は?」

「昨日の夜名前だけ述べて病院の入口で倒れていたんですよ。」

何も覚えていない。というか自分の名前すら知らない人の名前に聞こえた。そういえば僕は神崎という苗字なのか。何を言っているのかわからない、ここはパラレルワールドか?

「あ、ごめんなさい。頼れるところがなくて」「そうだったのですね。精密検査は済みましたが、外傷が酷くて骨折してるぐらいでその他は何事もありませんでしたよ。」「え!骨折してるんですか?僕!」「なので1週間ほど入院しましょう。手続きは今度。」そういって医者はいなくなってしまった。とっさに『覚えている』と嘘をついたが骨折をしているとは驚いたことだ。なんにしても何も覚えていない。ましては自分の名前すらもさっき聞いた神崎という苗字ぐらいだ。もしかしてこれがぞくにいう記憶喪失とやらか?不意にもわくわくしてしまうが、そうも言ってられない。生活ができないからだ。

「そうだなんか持ってないか探ろう」

僕はあらゆるポケットや近くに置いてあったバッグを漁ってみた。

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