第1話 調査任務
そもそもなぜ封鎖された場所に行くことになったのかは半年近く前の話だ
パークから退去することになる直前にキョウシュウエリアに作られたサンドスターロウを観測する装置から月1で自動送信されてくるデータにおかしな点があったことだ
不思議なことにある日を境にして大気中に含まれるサンドスターロウの数値が急激に減少したことだ
最初は機材の故障かと思われていたが、故障であればラッキービーストが修理するはずだし、なにより2・3ヶ月も減少してるデータが送られているのならば誰かがサンドスター火山のフィルターを貼り直してくれたのではないかということで調査することになった
まぁ、上陸の許可が下りるまでさらに3ヶ月くらい時間がかかっちまったがな
そしてジャパリパークへ上陸する当日・・・
―ジャパリパーク近海・シロナガス号内部―
「すみませんアレックスさん、本来なら私が行くべきなんですけど・・・」
黄緑色の髪の女性、ミライさんが謝ってきた
「気にしないでください、それにあなたがあそこに行ったら誰がひよっこ達の面倒を見るんです?」
そう、彼女にはパークにヒトが戻れるようになった時のためにジャパリパーク保安調査隊、通称「探検隊」の隊長候補生を育てるという大事な仕事があるためそう簡単に離れることは出来ないはずだ
(それに彼女が行ったら色々とやばいことになりそうだしなぁ)
「アル、今彼女に対して失礼なこと思わなかったか?」
「き、気のせいじゃないですか?軍曹?」
俺と同じM1942パラシュート降下兵用戦闘服を着ている彼は俺の上司のカークウッド(愛称 カーク)
彼を軍曹と呼んだのは昔軍にいたころの癖のようなものである
最初のころは「もう軍人じゃないんだぞ」と言われていたのが懐かしいな
「まぁ、お前が思ったことに関しては俺も同意見だけどな」
「お2人ともひどいですよ!ただフレンズさん達を愛でてるだけじゃないですか!」
あなたの場合その愛で方が問題なんですよ…
匂いを嗅ぐ程度ならまだマシで(マシじゃない)ひどい時には涎たらしながらじわじわ近寄っていくし、近づく対象がフレンズだからよかったものを(よくない)ヒト相手だったら大問題ですよ…
って、カークがこっちに来たってことはもしかして?
「さて、そんなことよりボートの準備が出来たぞ、そっちの準備は出来てるか?」
やっぱり、その報告だったか
「こっちは準備OKですよ」
「よし!それじゃあ今回の任務についてもう一度説明するぞ」
カークがそういうとミライさんが任務内容を説明する
「はい、今回の任務の内容は先ほど説明しましたけど、アレックスさんもご存知の通り、半年ほど前からキョウシュウエリアに設置されてる観測装置からのデータが基準値近くまで低下していたので、サンドスターロウの観測装置が正常に稼働しているかの確認をお願いします。
それとこれは観測装置が稼働していれば問題ないと思うんですけど、一応サンドスター火山のアンチセルリウムフィルターがきちんと張られているかどうかの確認もお願いします」
「それとセルリアンに関してだが、正直言って封鎖された時のままの姿なのか、それともフレンズと同じで世代交代しているかもしれん、十分気を付けろよ」
「その辺は大丈夫ですよ!それじゃあ自分はそろそろ行きますね」
俺は2人に軽く敬礼をしてボートがある左舷デッキへ向かった
後ろで「ああ言ってる時が一番無茶するんだよな」とカークがミライさんに言ってた気がするが気にしないでおこう
―シロナガス号左舷デッキ―
俺がボートがある左舷デッキに着いた時、ボートの近くにいたフライトキャップとパイロットゴーグルを付けた男が俺に気づいて声をかけてきた
「よぉアレックス!こっちはお前の準備が良ければ降ろせるぜ!」
「ついさっき2人にも同じことを言われたし同じことを言ったよ」
こいつは同僚のハンス、チームのメカニックマンだ
「それにしても、トワ園長には感謝しないとな。彼が無茶してくれたから数ヶ月とはいえ今回の上陸許可が出たんだろ?」
「ああ、そうだな」
ハンスの言葉に俺は遠くにうっすらと見えるジャパリパークを眺めながらそう答えた
あの人もカコ博士ほどではないがかなり無茶をするタイプの人だったな
まぁやっと日本本土からジャパリパークに戻ってきたってのに、その直後にパークからの撤退指示があったんだ
悔しかったのはみな同じだったが、大事な時に殆どパークに居られなかった彼が一番悔しい気持ちが強かっただろう
だからこそ、今回の調査でパークが安全だってことを証明しないと上陸許可をもらった彼に申し訳ない
「そんなに気負った顔すんなよ」
「ああ?」
「気楽にやれとまではいわねぇけど、少しは肩の力を抜けよ?
お前の悪い癖だぞ」
確かに、ハンスの言う通りだな・・・
ふと腕時計を見てみると針が12時を指していた
さて、そろそろ行くか。
そう思いながら俺はクレーンに吊るされたボートに乗り込み、ハンスがクレーンを操作してボートを降ろし始めた
「時間はたっぷりあるんだ、無茶してセルリアンに食われるなんてヘマするんじゃねぇぞ!」
「俺がそんなに無茶をするタイプに見えるか?」
「いくらアニマルガールを助ける為とはいえ崖から飛び降りて腕の骨折りかけたり庇ってセルリアンの攻撃食らいそうになったりした馬鹿はどこの誰だったっけ?」
おっと、ぐうの音も出ねぇ・・・
そう思っているとボートが水面に着水し、クレーンのフックを外した
「それじゃあ、幸運を祈ってるよ!」
「ああ、けものに幸あれ!」
俺達の隊のモットーを返すと同時にボートのエンジンをかけ、進路をジャパリパークへ向けた
「行っちまったか・・・」
パークへ向けて遠ざかってゆくボートを見つめながらハンスはそう呟いた
「さっきも言ったが、無茶だけはするなよ?」
彼は「お前がやる無茶はなんだか死に急いでいるように見えるからよ」と呟いてから2人に報告するためにデッキを後にした
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