第2話 上陸

ボートを走らせて1時間ぐらいだろうか、目的地であるジャパリパークのキョウシュウエリアが見えてきた

(ただいま、ジャパリパーク)

俺は心の中でそう思いながら黒色の羽を付けた帽子を押さえながらボートのスピードを上げ日の出港に向かった



―ジャパリパーク キョウシュウエリア 日の出港付近の海岸―



「パークの平和をまっもる~ため~、CRHは出動だ~、フレンズた~ちと協力し~、ひっとつ目ど~もをやっつけろ~っと」


いつの間にか俺たちのチームのテーマソングとなっていた替え歌を歌いながらどっかのアクション映画のようにボートを砂浜に引っ張り上げている

(ちなみに歌い始めたのはハンスで元はあいつが暇つぶしにやってたゲームに出てきたリパブリック讃歌の替え歌らしい)

てか何でCRHなんだか?そっちよりCHTの方が語呂がいい気がするんだが・・・

まぁそんなことは置いておくとして、


「こんなところに岩礁なんてあったか?」


ここから撤退するときに最後にこのあたりから海を眺めてたんだが、その時にはあんなところに岩礁なんかなかったはずだ

まぁあれから5年ぐらい経ってるからサンドスターの力とかそういった理由で地形が変わったのか・・・いや、待てよ?

そういえば黒いセルリアンは水をかければあんな感じに固まったはずだ

となるとあれは黒セルリアンを水没させてできた岩礁なのか?

そうなると誰が海に水没させた?アニマルガールか?

いや、それはありえないか

そもそも奴は水を掛けると石になるっていうのはミライさんのチームが偶然発見したことだし、なによりそれを実行した彼女のチームで残ったのはカラカルだけのはずだ

そうするとカラカルがこのチホーに居てほかのアニマルガール達と協力してやったのか?


「・・・考えててもしゃーないか」


今回の調査目的は火山のフィルターと観測装置の確認であって撤退時にはなかった岩礁の調査じゃない

そう思いながらボートに積んでたバックパックに手を伸ばした時、後ろの方からぴょこぴょこと聞きなれた音が聞こえてきたので振り返ってみると


「おやおや、懐かしい顔がいるぞ」


「初メマシテ。ボクハ、ラッキービーストダヨ。君ノ名前ヲ教エテ」


名前か・・・データが残っていればいいが・・・


「俺はアレックス、セルリアン討伐部隊セルリアンハンター所属、ALアルファ・リマ1013」


俺がそう言うとラッキーはピロピロという音をたてながら検索中と呟いている

数十秒ぐらいするとデータが見つかったのか別な電子音を鳴らしてから話し始めた


「検索完了、オ帰リ、キャプテン、君ガ戻ッテ来タトイウコトハパークノ閉鎖ガ解除サレタト見テイイノカナ?」


「いや、残念だけど解除はされてない。けどこの調査がうまくいけばそれも現実になるはずだ」


俺はバックパックを背負いながらラッキーにそう説明する

調査が終わってパークの安全が保障できれば閉鎖は解除されるはずだし、仮に解除されなかったとしても、「例の異変」の被害がデカかったキョウシュウチホーが安全だと分かればここを基盤にほかのチホーの調査ができるはずだ

・・・ってちょっと待て、このラッキービースト、よく見たら尻尾の部分が一部黒いな?


「お前、もしかしてイェーガーか?」


「ソウダヨ、LB-H-Y01、通称イェーガーダヨ、コレヨリキャプテンノ任務ヲサポートヲ開始スルヨ」


やっぱり俺達の隊にいたラッキービーストだった

しかも今回の調査任務のサポートもしてくれるなんてツイてる


「ありがとな、それじゃあ早速で悪いんだが、調査に入る前に自衛のために武器を確保したい。確か日の出港近くの小屋にアニマルガールが触らないように隠してたのがあったよな?」


そう聞くとイェーガーは「コッチダヨ」と言いながら先に行ってしまった

って、それを眺めてる場合じゃない付いていかねーと



―キョウシュウエリア 日の出港近くの管理小屋― 



「ココダヨ、ココダヨ」


彼の後を付いて行って2~3分ほどたっただろうか?俺の武器を隠してある管理小屋にたどり着いた

回収のために早速中に入ってみると今までアニマルガールがここに入らなかったのか物が撤退した当時のままきれいに残っていた

不思議そうに思っていたのが顔に出ていたのかイェーガーが「ボクガフレンズ達ガ入ラナイヨウニコノ辺リヲ見回ッテイタンダヨ」と説明してくれた

え~っと確かこの額縁の裏側に・・・っと、あったあった

俺が額縁の裏にあった隠し金庫から取り出したのは対セルリアン用に一部の機械好きなアニマルガール達と共同開発した銃が2挺、さしずめM1911JPジャパリパークカスタムといったところか

忘れずにマガジン型のバッテリーも回収してっと・・・っと、そうだ。イェーガーに例の岩礁のこと聞いてみるか


「そうだ、イェーガー。海岸のほうに撤退時にはなかったはずの岩礁があったんだがお前は何か知らないか?」


あの岩礁が出来た理由が何であれイェーガーがこのあたりを見回っていたなら何か見ているはずだし、仮にイェーガーが見てなかったとしてもラッキービースト独自のネットワークで何か知ったるはずだ


「アノ岩礁ハ半年グライ前ニ暫定パークガイトガフレンズ達ト協力シテ巨大セルリアンヲ海ニ沈メタ時ニ出来タ物ダヨ」


何だって?誰がパークガイドに?このパークには封鎖されてからは誰も侵入していないはずだよな?

アニマルガールがパークガイトになれるはずないしそもそもラッキービーストの規則で会話はできないはずだ・・・

イェーガーから詳しい話を聞こうとしたが、その瞬間彼から警報が鳴り響いた


「注意!注意!セルリアンヲ探知!セルリアンヲ探知!ハンターハ直チニ現場ヘ急行セヨ!」


くそっ、こんな時に・・・


しゃーねぇ・・・とっととセルリアンを片付けてイェーガーから詳しい話を聞くとしますか!



― キョウシュウエリア 日の出港付近の森林 ―



というわけで今現在敗走中だよこん畜生!!

頭のてっぺんに羽が生えたような奴を1マガジン分使っても倒せねぇからで撒いたのはよかったんだがその撒いた矢先に黒玉野郎に遭遇するなんてよぉ!!


「ああもうしつこいんだよ!!」


未だに追ってくる黒玉に2,3発ほど撃ち込むが怯む素振りすら見せないで俺のことを追ってきやがる・・・

くそ!一つ目野郎ども、随分タフになりやがって!!

黒玉に追いかけられる直前にイェーガーにハンター権限でアニマルガールとの干渉禁止令を解除して別れた(放り投げたともいう)のはいいとして、あいつが助けを連れて戻ってくるまで逃げ切れるか?

幸いと言っていいのかスピードはこっちのほうが少しばかり上だが・・・その前にこっちのスタミナが切れるのが早いだろう

それならいっその事道から逸れて森の中を突っ切るか?いや、だめだ。小さい奴らならともかくあの大きさのタイプだとへし折りながら追っかけてくる可能性だってある・・・そうなった場合助けが来る前に俺が食われちまう・・・

くそっ、どうする?ほかに方法は?


「って、やっべ!」


武器が効かなかった焦りからかいつの間にか道から逸れてしまっていたらしい

気づいた時には3~4mほどの岩場が目の前に見えてきた


畜生!どうする?登るか?いやダメだ!登りきる前に黒玉に追いつかれるし登ってる最中に体当たりかなんかで揺らされて落されちまうのがオチか

こうなったら敵さんが木をへし折りながら追ってこないことを祈って森の中に逃げ込むか?


ズシィン!!


はぁ~・・・訂正、大きさのわりに意外と足が速えぇのな・・・


振り返ってみると黒玉がもうすぐそこまで接近していた

さぁ~って本格的にやばくなってきたぞ?

ここまで接近されたとなると森に入るために横に逃げてもすぐに追いつかれちまう・・・

となると、いっそのこと隙を見て奴の横を通り抜けちまうか?

・・・なんて思ってたら黒玉の野郎、側面から腕のようなもんを生成しやがった

そのまま正面に叩きつけてくれるんだったらそれをかわしてそのまま素早く横を通り過ぎちまおう・・・

叩きつけた後に周りを薙ぎ払いで攻撃してくるかもしれないがそん時はそん時だ!


そう思いながら横を通り過ぎようとして駈け出そうとしたその瞬間、黒セルリアンはポヨンという気が抜けそうな音を立てて吹き飛んだ


その時はイェーガーが助けを連れて戻ってきたのかと思っていたが、ついさっきまで黒セルリアンがいた場所にいたフレンズの姿を見た瞬間、自分の目を疑った・・・




「お前は・・・」


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