太陽の瞳

メグ

プロローグ


 暗い、暗い部屋。

 日の光の届かない私の部屋。

 私は太陽の光を浴びたかった。

 けれど部屋から出られるのは、月の輝く夜だけ。

 セトや『暁』色の瞳を持つ義兄は、その月を見てとても美しいと言うけれど。

 私はそうは思わない。

 あの輝きは真実の光ではないもの。

 それは、私が一番よく知っている。

 私がついそれをもらすと、もう一人の義兄が複雑な顔をした。そして、決まって彼は私の頭を撫でてこう言うの。

「いつかきっと、お前の望みは俺が叶えてやる。だから、お前は悲しむな」

 私が一番望むのは、月が真実の光を宿すこと。

 私は義兄のその言葉を疑ったわけではないけれど。

 この思いのやり場に困って、毎夜毎夜歌を口ずさむ。

 『月』は『太陽』の光を受けて輝くもの。

 

 だから――

 

 だから――

 

 昼の空に輝く太陽にこの歌が届くことを願って、私は今日も歌う。


 どうか――

 

 どうか――

 

 私にその輝きを


 届けに来て




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