仲良し同窓会4(−1)人組
レイノール斉藤
第1話
仲良し同窓会4(-1)人組
冬実「あれ、もう来てたんだ」
夏彦「冬実…か?随分変わったな」
冬実「何それ、老けたって言いたいの?」
夏彦「いやいや、そう意味じゃなくて…」
冬実「夏彦だってもうオッサンじゃん。白髪みっけ」
夏彦「え、マジ?」
冬実「あはは、嘘だよ」
夏彦「質の悪い冗談やめろよ。ただでさえ抜け毛が気になってるんだから」
冬実「そうなの?まあ、夏彦はハゲも似合うと思うよ」
夏彦「他人事だと思ってよぉ」
秋生「なんだもう盛り上がってんのか、俺は居ない方が良いか?」
冬実「秋生!久しぶり」
夏彦「よお」
秋生「久しぶり。校内には入れなかったのか?」
冬実「さすがにねー。十年前の卒業生だから、取り壊される前に見ておきたいとは言ったんだけど……」
夏彦「今にも崩れそうだしな。まあここで良いだろ。三人だけの同窓会なんだしさ」
秋生「三人…か」
冬実「……」
夏彦「……もう十年も経ったのか」
秋生「まだ十年だ。俺にとっちゃぁな」
冬実「実はさ、ここに来る前、春香の家に行ってみたの」
夏彦「へえ、親御さん。どうだった?」
冬実「居なかった。引越したみたい」
夏彦「……」
秋生「別に諦めたとかじゃないだろ。春香が見つかればすぐ連絡はいくさ」
冬実「…だよね。うん、そうだよね」
夏彦「…見つかるかな?」
秋生「おい、何言い出すんだよ」
夏彦「だってさ、もう十年だぜ?仮に見つかったとしても…」
冬実「分かるよ」
夏彦「冬実…」
冬実「何年経っても、きっと分かるよ。その人が春香だって」
秋生「だな、警察が調べればすぐ分かる」
冬実「もう!そういう意味じゃなくて…」
秋生「お前らはこれからどうする?」
夏彦「俺は海外で暮らすよ」
秋生「今からか?仕事はどうした?」
夏彦「辞めたよ。どのみち辞めようと思ってた。上司と合わなくてな」
秋生「直ぐ帰って来る奴の典型だな。自分探しって歳でもないだろ」
夏彦「うるせえな、だとしてもやれるだけの事はやっておきたいんだよ。冬実は?」
冬実「え、あたし?」
秋生「ああ、冬実はどうする?これから」
冬実「あたしは、なんかもう、疲れたな…待つの」
夏彦「お前、まさか…」
秋生「良いじゃねえか。それも一つの選択だ。四人の内誰かが決めた事は全員で応援する。そう決めたろ?」
夏彦「はぁ…分かったよ。好きにしろ」
冬実「ごめん。二人に迷惑かけるかもしれないのに」
秋生「良いって。お前がそう決めたんなら、それが正しいさ」
夏彦「ったく、そういう秋生はどうすんだよ」
秋生「俺か……まあ、一度会いに行って謝ってくるかな」
冬実「会うって、春香の両親に?」
夏彦「居場所分かんのか?」
秋生「……まあ、なんとかなるだろ」
冬実「そっか、皆バラバラだね」
夏彦「いや、そもそも十年間会わなかっただろ。十年後また此所で四人で会おうって春香が言い出さなければ、そもそも来てねえよ」
秋生「まあ、確かにな」
冬実「……ねぇ、また十年後ここで会おうよ」
夏彦「はあ!?無理に決まってんだろ。そんなの」
冬実「できるできないじゃなくて、約束する事が大事なの!ね、良いでしょ。秋生」
秋生「そこで俺かよ。まあ口約束だけなら……」
冬実「はい、決まり!」
夏彦「俺の意見は!?」
秋生「諦めろ。もうこうなったら冬実は何言っても無駄だ」
冬実「そーいうこと!じゃあまた十年後ね!」
夏彦「おいおい、行っちまったよ。ったく」
秋生「じゃあ、俺らも行くか」
夏彦「ん?ああ、春香の両親によろしくな」
秋生「……」
夏彦「秋生?」
秋生「ああ、分かったよ。じゃあ、また十年後な」
夏彦「マジかよ……まあ、行けたら行くわ」
秋生「それ言ってる奴来たためしが無いけどな」
夏彦「絶対行かないっていうよりマシだろ」
秋生「まあな」
夏彦「じゃ、元気でな」
秋生「ああ……」
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「次のニュースです。先日取り壊された小学校内から白骨死体が見つかった事件で、捜査の結果、遺体は十年前生徒だった北野春香ちゃん(当時十二歳)と判明しました。
また、昨日午前九時頃、春香ちゃんの同級生であり、事件に何らかの関係があると思われていた南田冬実さん(二十二歳)が警察に出頭し、春香ちゃんの殺害を仄めかす供述をしたということです。
警察は詳しい事情を聞くと共に、自宅で首を吊って亡くなっていた西樹秋生と、国外へ逃亡中の東山夏彦も事件に何らかの関りがあると見て捜査を進める方針です。
それでは全国の天気です。中継が繋がっています。中野さーん
終
仲良し同窓会4(−1)人組 レイノール斉藤 @raynord_saitou
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