第24話 鍛冶師

「竜殺し……まさか生きてお前に会えるとは思っていなかったぞ。てっきり次に会えるのはあの世でだとばかり……」


 信じられないとばかりにローガンを見つめる店主に、ローガンは破顔する。


「まったく同感だ。私もまさかお前がまだ現役で鍛冶をしているとは思わなかった」


「息子は独立して王国で立派にやってる。だから俺は安心してこの店と心中できるのさ」


 そして店主は嬉しそうに近寄ると、力強くローガンを抱擁した。


「友よ、会いたかったぞ」


「ああ、私もだスミス」


 彼の名はスミス。腕利きの鍛冶職人で、かつてローガンの持つ宝剣を鍛え上げた男だ。


「そこのお嬢さんは?」


 再会を喜びあった後、スミスは思い出したようにローガンの背後に立っているエミーリアを指さした。


 ローガンに伴侶がいないことをスミスは知っている。故にエミーリアのことをローガンの子供や孫だとは考えなかった。


 しかしローガンは静かに首を横にふる。


「スミス、あまり聞かないでくれると助かる」


「訳ありか……まあ、だろうとは思ったよ。じゃなけりゃ、あの宝剣を持っているお前が俺の店に来るはずがねえからな。変な仮面もつけてるしよ」


「話が早くて助かるよ」


 スミスは職人の目をしてニヤリと口角を釣り上げた。


「ほしいのは新しい剣か?」


「ああ、丈夫な剣をくれ……そしてあまり目立たない剣だとありがたい」


「ぶった切る予定の相手は誰だ?」


「毛皮の分厚い亜人……もしくは鱗を持つモンスターあたりだな」


 それを聞いて、スミスは何かを考えるように腕を組み、宙をにらみつけると、やがてポツリと呟いた。


「ふん……一週間ってとこだな。それまで待てるか?」


「既成品で一本見繕ってもらいたい」


「なら……これだな」


 スミスが店の奥から取り出したのは、装飾の一切見当たらない、肉厚の刃を持つ鋼の剣だった。


「希少な金属を使っている訳じゃねえが、丁寧に研いだ分厚い鋼の両刃剣だ。野生の獣でも一刀両断よ」


 剣を受け取ると、ローガンは軽く素振りをする。


 前に持っていた安物のロングソードより重量があり、刃渡りは少し短いが使い勝手は良さそうだった。


「ふむ、悪くない」


 剣に納得したローガンに、スミスはその剣の値段を告げる。


「銀貨10枚だ」


 ローガンが銀貨を手渡すと、スミスは枚数を数えてうなずく。


「確かに……じゃあ一週間後にきな。とびっきりの剣を用意して待ってるぜ」

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