第14話 農村
◇
その場所は、傍から見る分には何の変哲もないのどかな農村に見えた。
ボロボロの衣服を身に着けている村人を見るに、豊かな村ではなさそうだが、それでも楽しそうに笑う子供の声と、朗らかな大人たちの表情を見れば、彼らが満ち足りていることがわかる。
「……本当にこの場所であっているのかしら? 相手は犯罪者でしょう?」
訝しげに眉を潜めるエミーリア。
ローガンは小さく微笑んで返答する。
「いかにもといった風な野党共のたまり場でしたら、すぐに居場所がバレてしまいますからな。長きに渡って居場所のつかめない犯罪者というのは、往々にしてこのような場所に潜伏しているものです」
「あいつが嘘をついてるということは無いの?」
「確率はゼロでは無いでしょうか……あの状態で嘘をつくとは考えにくいですな」
二人は漆黒のダナンが潜伏しているという情報を得てこの場所にやってきた。
しかし、高台から見えるその場所を見下ろしながら、ローガンはエミーリアに尋ねる。
「いかがいたしましょうか我が主。今は真昼……数の上で不利な我々にはあまりよろしくない時間帯ですが」
引き抜きがすんなりいくとは考えにくい。十中八九戦闘になるだろう。
兵力としてカウントできるのがローガン一人しかいないこの現状。敵がいるとわかっている場所にこんな明るい時間帯に行くのは無謀に思えた。
「夜まで待ちますか? 闇に紛れれば見張りの数人など物の数ではありませんが」
ローガンの提案に、しかしエミーリアは首を横にふる。
「いえ、今すぐに行きましょう」
「今すぐ……ですか?」
「アナタの立てた戦略は正しい。だけどね我が騎士……」
エミーリアはぞっとするような笑みを浮かべる。
「それは王道ではないわ。そもそも、圧倒的な力を示さずして敵が軍門に降るわけがないのだから」
ひたと仮面の奥にあるローガンの瞳を見つめるエミーリア。そして不敵な笑みを浮かべて命令を下す。
「力を見せつけなさい我が騎士。正面から行くわよ」
「……御意に」
◇
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