第2話 兵
◇
「なかなか良い城ね。しばらくはここを拠点にするわ」
我が物顔でくつろぐエミーリア。ローガンは「仰せのままに」と頭を下げた。
「我が主。これからいかがいたしましょうか?」
ローガンの問いに、エミーリアは少し考えるような表情を見せてから、ゆっくりと話し出す。
「そうね、とりあえず圧倒的に兵力が足りないわ。誇り高き竜族も、もはやアタシ一人だけ……。ほかの部族を出し抜いて魔王の座を手にするには、とにかく数が必要ね」
「兵……難しい問題ですな」
いくら個が強くとも数には勝てない。
数が多いという事は、それだけで脅威になりえる。
「地道に少しずつ兵を集めるのは性に合わないわ。何か手はないかしら?」
「そうですな……残念ながら、私の老いた脳みそでは、良い案が出そうにはありませぬ。しからば、参謀を探す必要があるかと」
「なるほどね……確かに、それは悪くない」
「頭脳の優れた種族となりますと……森の民……エルフを仲間に加えますか?」
エルフは森の賢者と呼ばれる長寿の種族。精霊を見ることができ、世界の神秘を理解すると聞いている。
しかし、エミーリアは首を横に振った。
「頭脳は申し分ない……でもエルフは平和を愛する種族。魔王の傘下に加わるような奴を探すのは難しいわよ?」
「であれば……やはり人間ですかな」
「でしょうね。我が騎士、あてはある?」
「いえ、私はしばらく俗世から離れて暮らしていた故……まずは情報収集が必要ですな」
「魔王の傘下に加わる人材。犯罪者か……もしくは自分の種族に興味のないやつ、人に絶望している者……そのあたりでしょうね」
「なんにせよ、人里に向かわねばなりませんな。私が情報を集めてまいります。主はここでお待ちください」
ローガンの提案を、しかしエミーリアはニヤリと笑いながら一蹴する。
「いや、アタシも同行するわ。待っているのは性に合わないの」
◇
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