第2話 兵




「なかなか良い城ね。しばらくはここを拠点にするわ」


 我が物顔でくつろぐエミーリア。ローガンは「仰せのままに」と頭を下げた。


「我が主。これからいかがいたしましょうか?」


 ローガンの問いに、エミーリアは少し考えるような表情を見せてから、ゆっくりと話し出す。


「そうね、とりあえず圧倒的に兵力が足りないわ。誇り高き竜族も、もはやアタシ一人だけ……。ほかの部族を出し抜いて魔王の座を手にするには、とにかく数が必要ね」


「兵……難しい問題ですな」


 いくら個が強くとも数には勝てない。


 数が多いという事は、それだけで脅威になりえる。


「地道に少しずつ兵を集めるのは性に合わないわ。何か手はないかしら?」


「そうですな……残念ながら、私の老いた脳みそでは、良い案が出そうにはありませぬ。しからば、参謀を探す必要があるかと」


「なるほどね……確かに、それは悪くない」


「頭脳の優れた種族となりますと……森の民……エルフを仲間に加えますか?」


 エルフは森の賢者と呼ばれる長寿の種族。精霊を見ることができ、世界の神秘を理解すると聞いている。


 しかし、エミーリアは首を横に振った。


「頭脳は申し分ない……でもエルフは平和を愛する種族。魔王の傘下に加わるような奴を探すのは難しいわよ?」


「であれば……やはり人間ですかな」


「でしょうね。我が騎士、あてはある?」


「いえ、私はしばらく俗世から離れて暮らしていた故……まずは情報収集が必要ですな」


「魔王の傘下に加わる人材。犯罪者か……もしくは自分の種族に興味のないやつ、人に絶望している者……そのあたりでしょうね」


「なんにせよ、人里に向かわねばなりませんな。私が情報を集めてまいります。主はここでお待ちください」


 ローガンの提案を、しかしエミーリアはニヤリと笑いながら一蹴する。


「いや、アタシも同行するわ。待っているのは性に合わないの」





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