中間テスト - 53日目 -

 テスト二日目。テストが終わればすべてが解放される。しかも今日は四教科、午前中で解放されるというなんと良い日! あれ? そういえば午前終わりなら弁当いらなくね? 行くとき持たされたな。どうしよう・・・。まぁ今はテストだ。それ終わってから考えよう。


 昨日からの継続で

 六教科目、物理。公式の暗記しかしていなかったけどどうにかなった。それ以外の計算に関しては出されなかったので。先生俺に優しい。

 七教科目、化学。暗記でしたね。俺今回のテストでどんだけ暗記しただろう。暗記量を考えると頭パンクしなかったのが不思議に思うくらいだ。

 八教科目、英語。リスニングは普通に出来た。耳だけはいいからな。何言っているかもわかったし問題もわかったし。これ一番出来たんじゃね? と思ったら筆記がダメだったのでトータルして思ったこと。俺この英語の先生嫌いだわ。

 九教科目、地理。一番手ごたえがあった。下手すりゃ上位に食い込むのも夢じゃない。いやぁやっぱり地理だな。


 全部終わった・・・。


「終わったー!」


「お疲れ様。どうだった? テスト」


「もう二度と受けたくないです」


「その気持ちもわかるけど、これからもやることになるからね。大丈夫、期末も余裕でしょ」


「俺の苦労を知らないくせに」


「わかってるわよ。解答用紙とテストに取り組んでるときの目を見たら、どれだけ真剣に勉強したかくらい」


「多分先生が思ってる三倍は苦労してると思います」


「他のみんなも同じように苦労してるんだから」


「わかってますよ、それくらい」


 久しぶりだな。本渡先生と話すの。さてと


「しっつれいしまーす!」


「光ちゃんを回収に来ました」


「回収って」


 テストが終わっていつも以上に元気な一条。これは空元気か? まぁいいや。あと更科、回収じゃねぇよ。もっと良い言い方あるだろ。例えば呼びに来るとか。物じゃねぇんだから。


「じゃあねみんな。テストお疲れ様」


「お疲れ様です!」


「失礼します」


 そして保健室を後にする。とりあえずはテストが終わった。ようやく楽できる。そういえば


「渡と日向は?」


「先に行ってるって」


「何で先に行っちゃうんだよ」


「そこは察してあげて」


 察すると言っても何だ? うーん・・・、ああ昨日の一条と本田か。よっぽど今日の結果が悪かったのか。じゃあ何も言えないな。


「この後どうしよっか?」


 一方の一条はご機嫌だ。やっぱり空元気か?


「俺弁当持ってるんだが」


「えー。私持ってないよー」


「家に持って帰って食べれば?」


「そうするか」


「そうしよー! ということで光ちゃんの家に行こー!」


 いや、何がどうしてそうなるんだよ。一条のやつ、さては俺の家でちゃっかりごちそうになることを狙ってるな。


「行こー!」


 更科まで・・・。もう知らん。勝手にしてくれ。ていうか俺の弁当作ったってことは母親は俺が午前で帰ってくるのを知らないんじゃ。


× × ×


「あれー? 鍵かかってる」


 やっぱりそうだった。いるわけねぇよな。さてどうしようか。


「近くにコンビニあるのでそこでお昼を買いましょう。その後は・・・公園に行って食べましょうか」


「私賛成!」


「はい!」


 日向の提案に一条と渡が元気よく応じる。どうやら渡と日向は切り替えたようだ。まぁいつまでも引きずっていてもしょうがないしな。


「それじゃあコンビニへ行こー!」


「おー!」


 更科の掛け声にみんなが応じて今度はコンビニへ向かう。


 コンビニで自分たちの昼を買った後公園に行った。この公園は以前一条と俺が二人で立ち寄った公園だ。何でわかるか、歩いた方角と雰囲気から。


「いただきまーす!」


 みんなして昼を食べ始める。うん? ちょっと待て。これってもしかして・・・


「はい光ちゃんのお弁当。最初はどれがいい?」


「はい」


 いつもは俺の弁当は慎が開けて俺に差し出している。だが当の本人は部活中。ということは・・・


「光ちゃん。口開けてー」


「むー!」


「自分でやるからいい」


 一条と渡に食事介護をされる。しかも一条はコンビニで余分に箸をもらってきたらしくその一膳を使って俺におかずを食べさせている。それを見た渡は何か知らんがやきもち焼いている。これって焼くと妬く、どっちが正しいのだろうか? いや、そんなこと考えてる場合じゃない。


「光ちゃん照れてるのかなぁ?」


「何か餌付けされてるみたいですね」


 餌付けってひどい表現だな。でも俺も同じことを考えた。ペットショップで店員から餌をもらう小鳥の気持ちだ。何か悲しい。それともう一つ、更科、俺をからかうな。自分で同じ立場に立ってみろ。よーくわかるぞ。あと周りからこの光景を見てみろ。異様だぞ。男子一人に女子二人が食べ物与えてそれを見ている女子二人って。下手すりゃ通報されるぞこれ。


「いいからやめろ。自分でやる」


「遠慮しないで。ほらほらー」


「わたしも」


 俺の言うことを全く聞かずに一条と渡は俺にあれこれ食べさせる。もし通報されたら『俺のせいじゃないです、こいつらのせいです』って言ってやろ。


「そういえば明日ってかえかえの運動会だったよね?」


「そうだな。多分今その買い出しにも行ってるんじゃねぇか?」


「私たちって行って大丈夫なの?」


「ダメって言ってもどうせ来るんだろ」


「バレちゃった。てへっ!」


「全く隠れてねぇぞ」


 言ったのは一条だけだがどうせ渡も来るんだろうし。運動会って関係者以外立ち入り禁止じゃなかったっけ? ああ、でも母親の事だ。どうせかえでの親友だから関係者ですとか言いそう。


「明日って何時から?」


「確か競技開始が10時・・・だった気が」


「かえかえは何に出るのですか?」


「教えてくれねぇんだよ。恥ずかしいからって言って。まぁでも全員参加のやつには出るだろうから」


 明日のことについてに更科と日向に聞かれるが運動会について俺が教えられることは多くない。まぁ母親に聞けばいいだろうけど。


「おーい! みんなぁー!」


「あれって・・・。光ちゃんのお母さんだ!」


「は?」


 不意を突かれたというか何でここに来るんだよ。買い物の帰り道にしても方角的に普通来ないぞ。


「ごめんねぇ。今日午前中に終わるって知らなかったからぁ」


 車を停めて降りてきたのだろう。だんだん声が近づいてくるのがわかる。


「何でここがわかったんだよ」


「さぁ、何ででしょうねぇ」


 テレパシーだとするともう母親が人間じゃない説が出てくるので別の理由を考えよう。いつもここを通っている。一番あり得るがちょっと寄り道になるんだよなぁ。工事していたから回り道した。ありえなくないが道封鎖するほどの工事ってなんだよ。あと車の通りもそんなに多くないし。後は何だ・・・、スマホか? あ、スマホって確かGPS追跡できるアプリがあるって少し前にテレビでやってたな。もしかして、いや、もうこれ以外ないじゃん。いつ入れたんだし。


 そんなこと考えているうちに話は結構進んでいたようで母親が先に帰るからみんなで歩いてうちに来なということになった。まぁ距離そんなにないしいいか。それよりGPS追跡されていたことが気に食わん。


「人のこと追跡しやがって」


「まあまあ、そのおかげで場所わかったんだし」


「そーだよ! 光ちゃんいるところに私たちあり!」


「冗談じゃねぇよ。お前らも追跡されてるってことだぞ」


「確かに、それは嫌ですね」


「わたしはきいしないよ」


 まともなのは日向だけだった。今こうしている間も母親に場所知らせ続けているというのに。もう俺にプライバシーというものはこれっぽっちもない。俺の家族と家でプライバシーを確保できているのは父親とかえでの部屋くらいだ。でもこの二つもいつ明かされるか。もう時間の問題だ。


× × ×


 家に着いて久しぶりにダラーっとすることが出来る。ただしうるさい人たちがいるのでダラーっと出来ても寝ることは出来ない。


「今日はかえでも帰ってくるの早いからねぇ」


「あ、かえかえって明日何出るかわかりますか?」


「来ると思ってましたぁ! じゃーん! 運動会プログラムー!」


 絶対に用意してただろ。俺知らんぞ。かえでに何言われても。


「かえでが出るのはねぇ、徒競走でしょー。障害走でしょー。クラス対抗リレーでしょー。全員リレーでしょー。ダンス、女子全員参加のこれ」


「多くね?」


「かえではクラスの稼ぎ頭だからねぇ」


「稼ぎ頭ですか・・・」


 もっと言い方あるだろ。普通に柱とか要とかエースでいいじゃん。日向も若干引いてるぞ。それとおい一条、稼ぎ頭で稼ぐのは金じゃねぇよ。点だよ。そのくらいわかるだろ。


「そういえば保護者が出るのもあったわねぇ。光ちゃん出てみたらぁ」


「保護者が出るって何の競技だよ」


「確か徒競走じゃなかったかなぁ」


「俺だけ障害走になるじゃねぇか。おいお前ら、何噴いてんだよ」


「いや、言われてみたら確かにそうだなってッ!」


 いや人のこと言えないからね。更科と渡も走れば障害走になるからね。ていうかこれって自分自身を揶揄してることになるからね。俺は気にしないから言ったけど遠回しにあなたたちにも刺さってるからね。


「えーっとぉ、明日行くのは・・・」


「はい! はい! はーい!」


「わたしも!」


「それと部活組合わせてぇ、結構な人数ねぇ」


「じゃあ呼ぶなよ」


「いっぱいいたほうが楽しいじゃない」


「宴会じゃねぇんだぞ」


「似たようなものよぉ」


 俺たち明日途中でつまみ出されそう。だって俺だろ、母親、一条、一条の母親、渡、それと後から慎と佐藤と本田。これが宴会じゃなかったら何だってんだよ。


「ただいまー」


「かえかえおかえりー!」


 玄関へ走って行った一条とかえでがなんかしているのは無視。とりあえずかえでにはお疲れとでも言っておこう。


「明日本当に来るんですか?」


 一条と一緒に来たかえでがこう言う。


「行くわよぉ。行かない理由がないじゃない」


 あるぞ行かない理由。面倒。長い。暑い。でも学校は見に行かないとならないから結局行くけど。俺にとっては運動会は二の次だ。


「えー・・・」


 嫌そうにしているかえでの顔が浮かぶ。でも周りがみんな行きたがってるからなぁ。来ないでとは言えないようだ。まぁ俺だったら来るなって普通に言うけどな。そしてそれが無視されるところまで見える。


 明日か、主役はかえでだろうけど一方で俺にも向き合う現実がある。そう、向き合うために見に行く、これが一番だ。まだ二年しか? 二年も? どっちでもいいや。経っていないから当時を知る先生もいることだろう。でも俺は怖くない。その先生から何を言われても平気だ。だって、支えてくれる人がいる。見てくれる人がいる。俺はもう一人じゃない。これから、ずっと———。

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